2002年7月号 | |||||||||||
圧 力 の お 話
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松山技術コンサルタント事務所 所長 松 山 裕 | |||||||||||
連載の予定としては、第1回に圧力の定義や単位などの概要について述べ、第2回以降に圧力測定法について説明します。今回は第1回なので、「大気圧の発見」など歴史的な話もご紹介します。
こうして見ると、この圧力はかなり大きいと思われますが、我々は常にこれとほぼ同じ大きさの圧力を体に受けて生活しているのです。これが大気圧であり、これは我々の頭上にある空気の質量によって発生したものです。 現在は、毎日気象予報などで「○○ヘクトパスカルの低気圧がどことかで発生した」などと報道されていますので、大気圧の存在は常識になっていますが、17世紀までは必ずしもそうではありませんでした。
パスカルはトリチェリの実験を追試し、さらにこのトリチェリの装置における水銀柱の高さが、山の頂上とふもとで異なるかどうか調査するように義弟ペリエに依頼しました。ペリエは1648年この実験を行い、場所が高くなるにつれて水銀柱の高さが減少することを確認しました。実験にあたったペリエとその一行は、この事実をまのあたりに見て、感歎と驚異のあまりしばし我を忘れたと伝えられています。この実験により、水銀柱を支えているのは大気圧であることが証明されたのです。なお、大気圧の存在を証明したもう一つの実験に、1654年ドイツのゲーリケが行ったマグデブルグの半球の実験がありますが、これについては説明を省略します。
パスカルは、前出のフランスのパスカルにちなんだ名称です。1パスカルの表す圧力は、つい最近まで一般的に使用されていたkgf/cm2のおよそ105分の1ですから、非常に小さい量です。そのためヨーロッパのほとんどすべての国では、バールが一般的に使用されています。1バールは約1.02kgf/cm2ですので、kgf/cm2から切り換えやすい単位です。バールは上記のように現在の計量法にも採用されているのですが、お役所の行政指導により日本ではほとんど使用されていません。このようになったいきさつについての説明は省略しますが、ご興味のある方は小著“やさしい計量単位の話”をご覧ください。 なお、アメリカは今でもヤード・ポンド法のpsi(pound per square inch)を使用しています。したがって、先進国でパスカルをメインに使っている国は日本のみなのです。
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