2002年7月号

海外レポート

最近の中国から

(株)エム・システム技研 総務部長
 
は じ め に
 2008年の北京オリンピック開催決定に続いてWTO加盟の決定と、2001年は中国にとって画期的な年でした。また一方、世界の工場としての中国の役割はますます大きくなりつつあります。 今回、中国において最近著しい発展を遂げつつある地域を視察する機会がありましたので、以下、北京についてはPROFIBUSを、天津については大学を、深については電子機器組立工場それぞれ紹介します。

1.北 京
 オリンピックの開催が決まった北京では、ビル建設ラッシュが続いています。一説には世界のビル建設の60%を中国が占めているということです。 さて、産業用フィールドバスの必要性が高まる中で、2001年12月にはPROFIBUSが中国国家規格として採用されました。フィールドバスの国家規格としては中国最初のものでChina Machinery Industry Federationにより、制定・発行されました。また、中国は国際PROFIBUS協会から2001年8月にテストラボラトリーの設置承認を受け、北京にPROFIBUS認証センター(Chinese PROFIBUS Competence Center,CPCC)をオープンしました。世界各地のPROFIBUS Product Test Laboratoryの一つとして、China Association for Mechatronics Technology & Application の下に設置され、唐主任以下4人のスタッフが認証業務に当たっています。標準的な認証期間は2週間であり、始めの1週間で機器の接続や動作を確認し、残る1週間でテストを終了します。 アジアで最初の認証センターをなぜ北京に設置したかを尋ねたところ、中国のマーケットが1999年から2000年で3倍になったことと、ヨーロッパからスタートしたPROFIBUSを、これに賛同してインターナショナルな規格にするためとのことでした。 なお、2002年3月には、エム・システム技研のリモートI/O R5シリーズのPROFIBUS対応モデルがこのセンターでテストを受け、認証されました。

2.天 津
 天津大学がある天津市は、北京から車で約2時間、人口1000万人の都市です。 天津大学は、1895年に中国で最初の近代的な大学として設立されました。お訪ねした工学部・電気自動化与能源工程学院(School of Electrical Engineering and Energy)は、自動化計装の分野で中国トップクラスだそうです。説明の中で興味深かったのは、産業界の課題を解決することが、大学の目的の一つとして強く打ち出されていたことです。いわゆる産学協同のイメージを超える活動が紹介されました。また、流量計の試作品と学内での製造工程を見学しました。 研究室で計測機器の開発を行い商品化して製造販売する。大学教員が企業の役員を兼任して指導を行う。企業の商品開発を受託する。大学と企業で資金を出し合い合弁企業を設立する、以上のように、日本の大学とは桁違いに実学重視の姿勢が打ち出されていました。また、プレゼンテーションルームには、企業から寄贈された計装機器が並び、実機による実際的な演習が行われています。 これには、中国の大学政策が如実に反映しています。1995年に国立大学の法人化が決定し、産学協同形態の校営企業(大学付設の企業)の設置が認められました。各大学の自由度が高まる代わりに、独自に研究費を集めて発展する必要性が生まれました。この結果、日本の産学協同とは比較にならないほど大学の研究内容の社会への展開が進んでいます。会議をしていても、大 学の先生というより民間会社の幹部の方と話しているとの印象を受けました。意志決定のスピードと結果を重視する姿勢が強く表れていて、中国のダイナミズムの一端をかいま見た思いでした。

3.
 次は、世界の工場といわれるようになった、中国を支える深の電子機器組立工場を見学した印象です。
 ●賃金は日本の30分の1
 工場の生産ラインで働く労働者の賃金は、20歳前後で月収は8千円~1万円程度で、年間収入は、実家の年収の5~6倍になります。労働者の採用は、地方でエージェントが募集し、バスで工場へやって来ます。企業は寮を完備して食住を保証し、中には初めて電気のある暮らしを経験する人もいます。3年から5年勤務して故郷に帰りますが、数年勤めると郷里で家が建つぐらいの蓄えになるそうです。工場勤務の応募者はいくらでもいて、工場の前に張り紙をすれば、数名の募集にすぐ200人くらいは集まるそうです。 数百人の作業者が製造ラインに並ぶとさすがに壮観で、向こうの方はかすんで見えなくなるほどでした。部品実装のラインでは工程を細かく分け、1人2部品を挿入し、5人に1人の検査係を置いていました。まさに、日本の30分の1の人件費がなせる作業方法です。3年前、日本から進出して5人で始めた会社が、今では500人の工場に成長したという話が普通に語られていました。
 ●視力は3.0
 ここで働く人の視力は2.0~3.0が普通です。工場の案内の方が4年前に来たころは、周辺の村ではテレビは1台しかありませんでしたが、今では、テレビはどこでもあるようになり、そのせいか視力3.0の人は少し減りましたが、最低2.0はあります。日本では機械でないとできない表面実装部品の取り付けも、人手で可能です。
 ●のインフラ事情
 電気は電力会社から受電していますが、夏には町全体が停電することが数回あります。そのため、自家発電装置を備えてまかなっています。通信事情は近年かなり改善され、E-mailも着くようになりました。ただし、送ってから数日後に着くこともあるそうです。電話は普通につながります。道路は縦横に張り巡らされ、高速道路は片側3車線または2車線で、主要なエリアを結んでいます。トラック輸送により、今日出荷した荷物は翌日には香港から世界各国へ出荷されます。

お わ り に
 北京からはPROFIBUSを、天津からは大学の状況を、今最も発展著しい深からは工場の様子をレポートしました。■

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