2002年9月号

超高耐量、高速形 電源用/信号用避雷器(形式:MMAH/MMDH)

(株)エム・システム技研 開発部
 
は じ め に
 電子式の計測器は、一般に優れた性能をもち、集中制御、集中管理を行うために不可欠な機器ですが、落雷に伴って生じる誘導雷サージによって破壊されやすという問題を抱えています。エム・システム技研は、誘導雷サージのエネルギーによって破壊された機器を多数分析し、確実に計装機器を保護できる避雷器を多数開発してきました。
 さてこのたび、超高耐量、高速形 電源用避雷器(形式:MMAH)および超高耐量、高速形 信号用避雷器(形式:MMDH)を発売することになりましたので、その仕様、特長の概要についてご紹介します。

1.仕 様
 仕様の特長としては、放電耐量を20000Aに、応答速度を4nsにしたことです。また、MMAHには、異常表示ランプ(LED)を付けています。このLEDはヒューズ断時に消灯します。つまり劣化表示形になっています。その他の仕様については、表1をご覧ください。放電耐量を向上させたことにより、雷の多い地域でのご使用に一層適しています。

2.放電耐量
 ところで、放電耐量とは何でしょうか。
 放電耐量とは避雷器の性能を示す要素の一つで、避雷器に実質上の被害を起こすことなく流し得る最大のサージ電流をいいます。エム・システム技研では、図2に示す波形をもつサージ電流を印加した後、諸特性がなお所定の範囲内に留まる最大のサージ電流値を放電耐量としています。

3.雷の頻度
 では、20000Aの雷サージはどのくらいの頻度で発生するのでしょうか。
 電気学会発行の避雷器に関する規格(JEC-203)によると、日本における発変電所の避雷器放電電流の記録による統計から、放電電流の大きさは地域その他で差はありますが、避雷器1台当たり1000A以上は約20年に1回、2000A以上は約50年に1回、3000A以上は約100年に1回の割合となっています。また、アメリカの統計でも、5000A以上は全体の5%となっています。
 これらのことから、避雷器の放電耐量が1000Aあれば、一応の効果が期待できます。また、20000Aの雷サージが生ずる可能性は相当稀といえます。しかし、重要度の高い電源システムなどでは、放電耐量の大きい避雷器が必要になります。今回の新製品は、そのようなところにお使いいただけます。

4.20000Aへの改良
 避雷器の放電耐量を20000Aにするためには、まず避雷器を構成する部品の一つである放電素子の放電耐量を20000Aにする必要があります。しかし、それだけでは避雷器全体の放電耐量が上がったことにはなりません。雷サージが流れるすべての経路(プリントパターン、コネクタ、端子など)の電流耐力を向上させる必要があります。
 たとえば、一般の電子機器のプリントパターンには厚さ18μmの銅箔がよく使われますが、同じ厚さで幅1mmのパターンに20000Aの雷サージを流せば、銅箔は一瞬のうちに蒸発して消えてなくなってしまいます。そこで、プリントパターンの幅を大きくしました。
 最終的に、製品化した避雷器については、東京都立産業技術研究所の技術評価室にて、放電耐量20000Aの確認を行いました。

5.雷サージについて
 ここで、一般的な雷サージについて考えて見ましょう。
 一般的な誘導雷サージの電流値は1000A程度です。サージインピーダンスは一般的に50~100Ω程度ですが、50Ωでも1000A流れる場合には、50Ω×1kA=50kVというサージ電圧耐力が必要になります。このような高電圧はサージ電圧耐力として非現実的です。したがって、1000Aというような大電流を流すためには、さらに低いサージインピーダンスが必要条件になります。
 例を1つ挙げます。
 低圧の電源ラインは柱上変圧器などで必ず低圧側の線が接地されています。受電場所がその柱上変圧器に近い(50m以内)とします。このような柱上変圧器付近に落雷があった場合が、高エネルギーサージが発生する代表例です。しかも、サージ電流値も最大級になると考えられます。
 これは非常に珍しい例ですが、可能性としては有り得ることなので、このような場合でも避雷器が壊れては困る重要な電源システムでは、耐量の大きい避雷器が必要になります。

6.避雷器の応答について
 標準雷サージ電圧波形としてJISなどで1.2/50μsと規定されています。したがって雷サージの波形はあまり急峻ではないということです(周波数換算で約292kHz程度)。
 避雷器の性能を表す値の一つとして応答時間注)があります。応答時間が速い方が性能が良いということは間違いないのですが、雷サージ波形があまり急峻ではないので性能を代表する数値とはいい難いと思われます。また、応答時間の概念は、必ずしも明確でなく、メーカーによって違うようです。避雷器メーカーの仕様には必ずこの応答時間が明記されていて、一般的には数nsが多いようですが、1psという途方もない数値を書いているメーカーもあります。
 これらの数値は実測値とは思えないので、部品単体の理論的な応答時間だと思われます。なお、数psという立ち上がり時間を周波数に換算すると約100GHz(100,000MHz)にもなるため、正確に実測するのはいずれにしても困難です。

お わ り に
 避雷器の保護性能としては制限電圧が最も重要なファクターであり、放電耐量は信頼性を示しているといえます。
 エム・システム技研の避雷器シリーズ、エム・レスタには、様々な電源用避雷器、信号用避雷器が揃っています。そして必ずや皆様の設備に適した製品をご選定になれると思います。今回ご紹介した電源用避雷器(形式:MMAH)、信号用避雷器(形式:MMDH)を含め、エム・レスタの中から最適な製品をご選択になり、十分な避雷効果をご確認ください。       ■

注)本誌2002年9月号「計装豆知識」参照

エム・レスタはエム・システム技研の登録商標です。

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