2002年9月号 | |||||||||
圧 力 の お 話
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松山技術コンサルタント事務所 所長 松 山 裕 | |||||||||
今回はブルドン管圧力計とベローズ式圧力計について説明します。
ブルドン管圧力計の構造を図1に示します。ブルドン管は、断面が扁平な楕円形の金属管の一端を閉じ、ほぼ円形に巻いたものです。これに他端から圧力を加えると、管の断面は円形になろうとし、巻かれた管がほどける方向に動きます。このとき閉じた先端の変位量は、この管の弾性限界内では加えられた圧力に比例します。この変位を、リンク・レバー・ギアを介して指針を動かすのに使用します。 図1に示したブルドン管は、形がCの字に似ているのでC字形といいますが、ほかに渦巻き形(スパイラル形)とつる巻き形(ヘリカル形)があります(図2)。 ブルドン管は、1852年にフランス人Bourdonが取得した特許に基づいています。構造が簡単で安く製造できること、圧力の指示に外部からのエネルギーを必要としないことなどの理由により広く普及し、市販されている圧力指示計の大部分を占めています。しかし、次に挙げる欠点があります。 ①ブルドン管から大きな力を取り出すと誤差が出るので、指示機構は軽く摩擦がないようにする必要がある。②通常ギアやレバーを使用するので、振動や衝撃に弱い。③ブルドン管の内部は狭いので、固形分を含む流体や高粘度の液体に対しては、そのままでは使用できない。 2.2 ブルドン管圧力計の種類 ブルドン管圧力計の規格には、JIS B 7505(1999)があります。この規格では、測定する圧力範囲により、下記の区別をしています。 圧力計:正のゲージ圧を測定するもの。 真空計:負のゲージ圧を測定するもの注)。 連成計:正および負のゲージ圧を測定するもの。その目盛は、正のゲージ圧を示す圧力部と、負のゲージ圧を示す真空部からなる。 また、ブルドン管圧力計の用途による種類には、下記が示されています。 a)普通形 b)蒸気用普通形 c)耐熱形 d)耐振形 e)蒸気用耐振形 f)耐熱耐振形 このうち蒸気用というのは、装置の運転開始時に水蒸気が流入して一時的な高温になる場合、これに耐える製品をいい、耐熱用というのは圧力計の周囲温度が最高80℃になる場合でも耐えられる製品をいいます。また耐振形というのは、振動がある場合や測定する圧力が脈動する場合に使用する製品をいいます。この製品を実現するには、頑丈なブルドン管を使用しかつ内部機構を改良して耐振性を向上させますが、そのほかに圧力計のケース内にグリセリンやシリコン油などの粘度の高い液を入れて、耐振性を向上させた製品もあります。 また、ブルドン管の振動に対する弱点はギア部分にあるので、ブルドン管を多数回巻いて感度を上げ、ギアを使用しない製品も市販されています(ネステック社)。 2.3 特殊な用途への対応 ブルドン管圧力計の使用にあたっては特殊な条件がいろいろあり、それぞれに対応した製品が製造されています。代表的な例を説明します。 (1)固形分を含む流体・凝固性液体・高粘度液体用 ブルドン管の内部は狭いので、上記のような流体をそのままブルドン管に入れると詰まってしまいます。そのため、図3に示す隔膜式圧力計を使用します。測定圧力は、薄い膜(ダイアフラム)と封入液を介してブルドン管に伝えられます。隔膜式というのはJIS B 7505の表現ですが、一般的にはダイアフラムシール式ということが多いのです。ダイアフラムの材質としてはステンレスが標準ですが、測定対象によってはタンタル、チタン、ハステロイ 、モネル、テフロンなども使用されます。 (2)腐食性流体用 測定対象に適したブルドン管材質がない場合や、あっても非常に高価になる場合は、やはり隔膜式の採用が適しています。 (3)サニタリー用(食品・医薬品用) 食品製造装置では、隙間やポケットがあってはなりません。その場所に食品がたまると腐ってしまうからです。そのため、この場合も隔膜式を使用します。ただしサニタリー用では、ダイアフラムシール部の下フランジは使用せず、サニタリー接手という特殊な接手を使用して装置と接続します。この接手は、すぐに装置からはずしてダイアフラム面を洗浄できる構造になっています。なお封入液には、万一ダイアフラムが破損して食品に混入しても安全な液体を使用します(グリセリン・シリコンオイルなど)。 (4)酸素用 酸素の圧力を測定するときは、圧力計に油分が付着していると危険です。そのため出荷前に脱脂洗浄を行います。
ベローズは圧力に対する感度が大きく、かつブルドン管より大きい力が得られるので、比較的低い圧力の測定に用いられます。 ■ 注)通常の真空計の目盛は絶対圧表示なので、この定義は一般的ではありません。 |
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