2003年2月号

アメリカ合衆国 イリノイ州 シカゴ
ISA 2002見学記

(株)エム・システム技研 技師長
 
はじめに
 計装業界の米国における定例行事であるISAエキスポ(The Instrumentation Systems, and Automation Society Exhibition)は、2002年は10月21日~24日の4日間、シカゴのマコーミックプレイス南館で催されました。ヒューストンで行われた2001年のISAエキスポは、初日に9月11日事件が発生して、残念にも中止になったことは記憶に新しいところです。エム・システム技研は、今回も視察研修ツアーを組織して15社21名のお客様を無事ご案内することができました。

1.市場の変化
 世界的な経済動向に起因する設備投資抑制の波が如実に表れた展示会でした。横河、山武、東芝、Honeywell、Rosemountなどの大手PA総合計装メーカーは出展していませんでした。ABB、Invensysはブースを出しているものの、小規模な展示で訴求点が明確ではありませんでした。DCSとしての展示はまったくなく、時代の変遷を感じました。重厚長大な構成のDCSは、技術的にも市場的にも発展と伸びが止まって、不特定多数の見学者に展示するメリットがなくなったものと考えられます。極言すれば、DCSの化石化が進んでいるのではないでしょうか。

2.F.F.(Foundation Fieldbus)
 DCSに置き換わる存在としてのF.F.(Foundation Fieldbus)は例年なみのブースを設けていましたが、協会としての統一的なPRや啓蒙活動よりもF.F.機器ベンダ製品の集合展示的な色彩が強いようでした。全世界で4000システム50万F.F.端末が稼動しているとPRしていましたが、その可用性、ロバスト性、経済性、エンジニアリング作業の難易/コスト、トータルの導入メリットの有無などに対するシビアな評価期に入ったという印象を受けました。

3.HART、PROFIBUS
 HART協会、PROFIBUS関連の展示には多くの人が集まり活気が感じられました。その理由は、これらのもつ「既設の検出端、操作端などの計装機器と協調して、必要な部分、可能な部分からデジタル化してそのメリットを得て行ける」というコンセプトが現状の市場環境にマッチしている点にあると思われます。
 ちなみに、エム・システム技研は、この動向に鑑み、最近では本質安全防爆・HART 通信対応 2 線式ユニバーサル温度変換器(形式:B6U)とPROFIBUS-DP対応リモートI / O 変換器R5 シリーズを製品化して実績を上げています。

4.信号変換器
 信号変換器メーカーからの出展は、Acromagとエム・システム技研だけで、それも小規模な展示でした。Action、Moore、MTL などの欧米大手は出展していませんでした。この世界もDCSと同様に限られた市場規模をめぐるベンダ間の競合が激しくなることが予測されます。否、もうすでにそのただ中にあると思うべきかもしれません。

5.新しい流れ
 上記に対して、信号端子台メーカーと分類されるWAGO、P&F、Phoenix Contact が揃ってブースを広くとって盛大な展示をしていたのは注目に値すると感じました。いずれも共通して、次に列挙するような訴求の仕方をしていた点が印象的でした。
 1)省スペースで融通性と安全性が高い端子台といううたい文句から始まって、避雷器、バリア、アイソレータなどの安全計装用機材
 2)端子台型の入出力モジュールを横に連ねた形のリモートI/O(彼らの呼び方ではDistributed I/O)
 3)これの上位接続手段としてのProfibus、DeviceNet、Interbus、Modbus、HSE(High Speed Ethernet)など、あらゆるオープンフィールドバスに対応する通信モジュールの取り揃え
 4)通信モジュールとして、IEC61131-3規格プログラマブル・コントローラ・プログラミング言語注)を搭載した製品の準備と提供
 5)これら通信モジュールをOPC対応にすることによって、Windows PC上での業界標準である各社HMIソフトとの容易な接続性の確保
 なお、エム・システム技研は、従来からこの線に沿ってパソコン計装を標榜し、MsysNetやR5 シリーズなどをお客様に提供して実績を上げています。

6.オープン/マルチベンダ
 5.項の意味するところは、主として次ぎに挙げる2点に集約できると思われます。
 1)「センサ/アクチュエータ」層と「管理コンピュータ」層の間の計装要素(ハード、ソフト)を端子台ユニット内に全部取り揃えて、自分達に任してもらうというビジネス拡大戦略。
 パソコンと端子台をシリアル通信で結ぶだけで、制御ネストを不要にした中抜き計装を提案
 2)その際、業界標準のオープンな技術、材料、規格はすべて取り込んで活用する。このことによって、自らは開発労力と時間の節減メリットを享受し、ユーザーに対しては市場実証済み(Field Proven)の安心感と、ベンダ独自性を廃しているため導入以後ベンダに囲い込まれる恐れがない安心感 (いわゆる“オープン/マルチベンダ環境”の提供)

7.PA計装とFA計装の一体化
 ISAエキスポはPA機器の展示会であるため、PLC総合/専業メーカーの出展はありませんでしたが、その中にあってSIEMENSは代表機種のS7シリーズで2重化制御構成の実演デモを行って人を集めていました。そこにあるのは、もはやPAとFAを区別する意識はなく、「計装用コントローラ」という統一概念でした。この点は、5.項に挙げた製品群についても同様でした。国内のPLCベンダにも同じ動きが見られます。そういう時代になったと見るべきでしょう。

8.テレメータリングの新潮流
 9月に行われた北京での「MICONEX 2002」と併せて、RTU(リモート・ターミナル・ユニット)と称する製品ジャンルが確立しそうだという感触を得ました。無線、各種電話回線、インターネット網などを利用した遠隔計測/データ蓄積/監視/通報などを主機能とする製品群です。これらの技術が実用期に入ったことに加えて、現場設備の無人化によるコスト低減、そのような現場群の中央からの集中管理による効率化など、市場の時代的要請を反映していると見るべきでしょう。
 エム・システム技研は、従来からテレカプラ/MsysNet/テレロガーなどの総称のもと、きめ細かく製品群をお客様にご提供し、好評を得て参りました。
 また、本誌2002年11月号、12月号でご紹介したフィールドロガー「TL2シリーズ」などは、個別の計装のみならず、産業用機器・装置メーカーが、新興市場であるリモート・メンテナンスに乗り出す道具立てを提供するものです。

おわりに
 以上概観してきたことをまとめると、以下のようになります。
 1)計装機器市場は伸びが止まっているのではないか。それは世界的な景気の後退で設備投資が止まったことが原因か。DCSなどの需要は大幅に細り、市場要求も低価格化/ダウンサイジングとオープン/マルチベンダ環境へと、大きく変化している模様
 2)計装機器業界はこれら市場要求に対応しなければ生き残れないのではないか
 3)それを可能にする技術や素材(半導体、通信、業界標準など)が実用期に入った
 4)その結果、市場と業界の構造変化が以前にも増して、激しく進む変革期に突入したと思われる
 なお、このような感想に対し、読者各位のご意見、ご批判を仰ぎたいと存知ます。下記にお寄せいただければ誠に幸いです。
 E-mail:kawashima@m-system.co.jp

注)PLC用プログラミング言語体系の国際規格。ラダーやファンクション・ブロックなどの3種の図式言語と、2種の文字列言語体系を標準化したもの。


ISA 2002視察研修ツアーに参加して
金子産業 株式会社
青山 文明



 2001年9月の米国同時多発テロの影響で、「INTERKAMA2001(ドイツで開催)視察研修ツアー」が中止となり、大変残念な思いをしましたが、2002年は、ISAツアーに参加する機会に恵まれ、初めてアメリカ・シカゴを訪問することができました。
 残念ながら、今回の展示会には計装業界大手であるEmersonやHoneywellが不参加でした。しかしその分、欧州やお隣の韓国からの出展が多かった印象を受け、今後の世界情勢の成り行きを垣間見ることができました。
 また、日本の展示会ではまず見ることができない多数のフィールド機器を目にすることができたことや、今回のツアーに参加された皆様と知り合えたことは、私にとって大きな財産となりました。
 最後に、本ツアーを主催していただいたエム・システム技研の皆様のご尽力ならびにご配慮に対し、厚く御礼申しあげます。

ISA 2002視察研修ツアーに参加して
株式会社 特 電
原木 直明



 私にとってアメリカ本土へ渡ることは初めての体験であり、海外の展示会を視察することも初めての、まさに初めてづくしのツアーであり、貴重な体験をさせていただきました。展示会でとくに目についたものは、フィールドネットワーク、予防保全、データロギングでした。フィールドネットワークは「HART」、「PROFIBUS」が比較的大きな小間で展示していました。データロギングで注目したのは、メモリ内蔵の手のひらサイズのデータロガーです。パソコンI/Fのデータロガーは様々ありますが、メモリ付であれば、パソコンとの常時接続も必要なく、データ収集を主目的にした内容であれば運用し易いと思いました。最後に、今回の視察を今後の仕事に活かして行きます。

ISA 2002視察研修ツアーに参加して
轟産業 株式会社
橋詰 勝明



 展示会場の感想については、私以外のツアー参加者の方が述べられていると思いますので、私が感じたアメリカの印象をご紹介したいと思います。
 今回のツアーで印象に残ったことをまとめますと、ニューヨークの地下鉄に自転車を持って乗ってきた人にびっくりしたこと。アカペラの黒人4人組がお金入れの紙袋を持って、歌いながら地下鉄の車両を移っていくのに偶然遭遇したこと。ニューヨークのホテルで自宅にTELして、2分ほどで$44取られたのに対して、コンビニで買った$5のPHONE CARDで公衆電話から日本に10分以上かけられたこと。アメリカでホットドッグを頼んだら「ポテト要りますか」と聞いてきたので、「YES」と答えたら、山ほど入れてきて、とても食べれなかったこと。ワシントン行きの列車のホームまでは改札がなく、切符を買わなくても行けることにびっくり。ホテルのTVでインターネットしたら、無料かと思ったらチャッカリ$10取られたこと。ニューヨークは秋春がほとんどなく、いきなり寒くなるため、Tシャツの人や厚着の人や皮ジャンを着た人など、いろんな季節のファッションが見られたこと。ニューヨークの朝の6時半に、ホテルのフィットネスクラブで多くの人が汗を流して、自転車をこいでたこと。アメリカン航空のフライトアシスタントが60歳近くのオバサンだったこと。
 以上、いろんな貴重な体験ができたうえに、日本に帰り土産を配りまわると、みんなにうらやましがられ、すばらしい旅行に行かせていただき、本当にありがたいなと感謝しております。この体験をもとに、今後の営業活動に役立てたいと思います。

ISA 2002視察研修ツアーに参加して
日本フローセル製造 株式会社
粟野 勉



 10月20日、ISA 2002見学のため、シカゴに向け出発しました。初めての海外研修ということもあり、個人で行く観光ツアーとは異なり、不安と期待が交錯する中での参加となりました。
 今回のISA 2002は、現在の経済状況を反映してか、例年に比較すると出展社数が少なかったようです。その中で、ヨーロッパ勢の進出が目立ちました。今回も、フィールドバスなどのネットワークが中心の展示でした。
 私は、仕事柄これらのネットワークの中で、流量計がどのように使われているかを中心に見学しました。各社とも、ケーブルコストの削減だけでなく、現場の機器から出力される情報量や多種類の機能(付加価値)について、アピールしていました。現在では、「HART」、「PROFIBUS」、「Foudation Fieldbus」などが主流のようでした。今後、日本国内においても、このようなネットワークシステムがどのように採用されていくかは、非常に興味深いところです。
 今回の研修ツアーには、いくつかの観光も含まれていました。ナイヤガラの滝を見て、そのスケールの大きさにアメリカを感じ、そしてエンパイヤステートビル、国連本部など幾多の摩天楼がそびえる世界経済の中心地ニューヨークを視察しました。さらに、グラウンドゼロを見学し、周りの情景に目をやったとき、ビルの壁が1年前に起きた同時多発テロの惨劇を物語っていました。そして、その中に鉄骨で作られた十字架を見たとき、そこにはテロという敵には絶対屈服しない偉大なアメリカのパワーを感じました。これは現地でないと感じとれない貴重な体験でした。
 今回の研修ツアーでは、計測と制御に関する最新の技術・製品や市場動向、そしてアメリカという国を肌で感じることができました。このような充実した時間を送ることができたのも、今回の研修ツアーを企画していただいたエム・システム技研、および担当された皆様方のおかげと感謝しております。この場をお借りして、心よりお礼申しあげます。

ISA 2002視察研修ツアー団長からの一言
株式会社 エム・システム技研



 エム・システム技研では、去る10月20日から27日にかけて米国イリノイ州シカゴで開催されたISA 2002に出展するとともに、恒例となりました「ISA2002視察研修ツアー」を実施し、15社総勢21名のご参加をいただきました。
 なお、2001年には「INTERKAMA 2001視察研修ツアー」の企画をしましたが、同時多発テロ事件で中止をした経過もあり、2002年は参加者それぞれ特別の期待をもってご参加いただきました。
 エム・システム技研ブースでは、国内でも急成長しているPCレコーダ(形式:R1M)や新商品のユニバーサル変換器 M3・UNITシリーズ、本質安全防爆対応2線式ユニバーサル温度変換器(形式:B6U)、リモートI/O(R1Mシリーズ、R5シリーズ)、ハンディレコーダ(形式: 50HR)を展示したほか、HART対応の変換器などを中心に展示を行いました。
 展示会場の広さは前回の半分程度で、1会場での展示になっていて、景気動向が反映したのか出展メーカーも半分のこじんまりした状況でした。とくに目に止まったのは各メーカーが各種バスへの対応をアピールしていたことです。また、リモートI/O製品を前回の2倍以上のメーカーが出展していて、さらにエム・システム技研でも力を入れている無線テレメータや画像伝送も多く見られました。
 ツアー参加の皆様からは、世界の計装業界の動向を知る機会となり、同時に自分の肌で感じることができたとのお話をいただき、十分に有意義なツアーとして収穫の多い視察になったと確信しております。
 最後になりましたが、このツアーにご参加いただきました皆様に、この場を借りて、種々ご協力いただきましたことについてお礼申し上げます。なお、今後も引き続き海外視察研修ツアーを企画して参りますので、多数の方々のご参加をお待ちしております。  ■
*テレカプラ、MsysNet、テレロガーはエム・システム技研の登録商標です。

 

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