2003年3月号

FAXロガー(形式: TL2F)

(株)エム・システム技研 開発部
 
は じ め に
 本誌2002年11月、12月号でフィールドロガー(形式:TL2シリーズ)の全体像をご紹介しました。本号では、同シリーズ構成機種の一つであるFAXロガー(形式:TL2F)について、簡単な応用例を用いてご説明します。

1.TL2Fの機能と狙い
 無人の現場設備群を中央管理室から遠隔集中監視・管理するには、各設備側に現場端末を設置し、中央管理室にパソコンやプリンタなどのコンピュータシステム一式を装備したうえ、両者を通信回線で接続するのが常識的ですが、FAXロガー(形式:TL2F)は、このような常識を打ち破る“パソコンレス(パソコン不要)”の遠隔集中監視・管理システムです。すなわち、“現場端末と、誰もが日常使い慣れているFAX電話機や携帯電話機で同等のシステムを構成できないか?”という発想から生まれた、新しい概念の商品です。
 TL2Fは、図1に示すような72mm幅のM・UNIT標準筐体にコンパクトに収納された現場端末で、公衆回線モデムを内蔵しています。このTL2Fを各現場に設置し、公衆回線に接続することによって、中央管理室側のFAX電話機に、それぞれの運転ログ・日報・月報などの帳票や、異常通報を印字させることができます。また、異常通報は、管理者のiモード携帯電話機に対して、電子メールの形でも行えます。
 FAX電話機や携帯電話機は、お手持ちのものがそのままご使用になれます。たとえ新規購入する場合でも、パソコンに比べて大幅に少ない設備投資で済みます。
 コンピュータシステムを構築する場合、一般に必要になる画面や帳票などアプリケーションソフトの開発およびシステム調整などの手間・リードタイム・初期投資などが一切不要です。
 このことはまた、遠隔監視・管理システムの立上げ時間の大幅な短縮にもつながります。
 また、日常の設備運用管理者にはパソコン取り扱いのための技術は求められず、設備に関する知識さえあればよいことになります。
 TL2Fを用いた応用例として、図2にマンホールポンプ群集中監視システムの概念を示します。

2.異常通報
 あらかじめ設定された異常事象を検出すると、現場端末は自動的にFAX電話機に電話をかけ、図3に示したような異常通報文を送信・印字させます。中央管理室に在席する設備管理者は、電話の呼び出し音と印字内容から異常が発生したマンホールの場所や異常内容を把握できます。また、管理者不在の場合でも、異常内容は紙上に残ります。さらに、あらかじめ登録した複数のiモード携帯電話機に電子メールを送らせることもできます。設備巡回中の設備管理者の携帯電話にメール受信メロディーが流れ、メールを開くと図4に示したような通報メールが画面表示されます。

3.FAX帳票出力
 図2に示すマンホールポンプの管理システムにおいて、図5に示すマンホール水位(PV1)と排水流量(PV2)の2点をアナログ信号で、また排水ポンプ1の運転/休止状態(LV1)と排水ポンプ2の運転/休止状態(LV2)の2点をデジタル信号でFAXロガー TL2Fに入力します。日報・月報の管理項目は、1時間ごと/1日ごと/1月ごとの、最大水位/排水量/ポンプ起動回数/ポンプ運転時間/ポンプ消費電力量とします(この計装例および管理項目は、説明用であり必ずしも実用例にのっとったものではありません)。
 TL2FがFAX機に出力した日報の例を図6に示します。
 出力する帳票としては、このほかに月報や、管理者がFAX機の電話ハンドセットからTL2に電話をかけてダイヤルキーで指定することによって得られる運転ログ(現時点までの異常発生/正常復帰、機器の起動/停止の履歴一覧)、前日、前々日、前々々日の日報、前月の月報などがあります。

4.機能設定(ビルダーソフトウェア)
 TL2Fの初期導入時に、遠隔監視・管理システム構築者は、対象設備に固有の監視・管理機能をTL2Fに設定します。この設定はTL2Fビルダーソフトで行います。TL2FビルダーはCD-ROMで提供されます。これをパソコンにインストールして動作させ、表計算ソフトのエクセルに似た表の空欄に必要事項を記入/設定して設定ファイルを作ります。次いで、この設定ファイルをTL2Fにダウンロードします。ダウンロードはパソコンとTL2FをRS-232-Cケーブルで直結して行うだけでなく、公衆回線経由モデムを介して行うこともできます。
 図7に、図6に示す日報を得るためのビルダー設定画面を示します。両者を比較して見ると、ビルダー画面は実際の帳票の様式どおりに作られているため、設定作業が帳票の実イメージの上で進められることがわかります。
 日報ビルダーの設定要領を以下に説明します。図6と対比しながらお読みください。
 検印欄:4つの欄に任意の見出しを設定することができます。
 帳票タイトル欄:この帳票の名前を任意に設定することができます。
 配置:帳票はA4判縦配置で、幅方向を9列に分割して使います。最左列は各行の見出し欄です。残る8列にデータを割り付けます。各列には見出しを設定できます。隣接する列を結合して、グループ見出しを設定することもできます。
 列データ設定:割付けるPV/LVのチャンネル番号を設定します。さらにそのチャンネルのデータ項目として、PVの場合は「正時値」、「平均値」、「最大値」、「最小値」、「積算値」から、LVの場合は「パルス列実量積算値」、「パルス幅実量積算値」、「パルス幅時間積算値」から選択します。
 1日合計欄:各列ごとに、「日合計値」、「日平均値」、「日最大値」、「日最小値」から必要な項目を指定します。複数指定できます。
 月報もまったく同様の設定手順で設定します。

5.信 頼 性
 TL2Fのハードウェアは、32ビットマイクロコンピュータ、シンクロナスDRAM、フラッシュメモリなど最先端の半導体チップから構成されています。しかも、省電力設計を徹底し、内部発熱を低く抑え、信頼性を高めています。
 また、帳票用の蓄積データは携帯電話で多用されているフラッシュメモリに書き込まれるため、停電対策は万全です。さらに、耐ノイズ性設計については、十分な吟味を行い、各種試験で確認しています。

お わ り に
 説明を簡潔にするため、簡単な例で説明しましたが、TL2Fではアナログ入力32点、デジタル入力32点までを扱うことができます。また、FAX帳票は8ページまで作成できるため、中小規模の設備管理用としては十分な容量が確保されているといえます。さらに、将来の商品として、文字列入力の音声合成回路を装備し、固定電話機や携帯電話機に音声で通報したり、随時の現場端末呼び出し時に操作の音声ガイダンスを与えることなどを検討しています。■

戻 る 進 む

*. 本ウェブサイト上に掲載されている情報は、掲載した時点での情報です。記載内容はお断りなしに変更することがありますのでご了承ください。

*. 本ウェブサイト上の表示価格には消費税は含まれておりません。ご注文の際には消費税を別途頂戴いたします。

MG 株式会社エムジー

Copyright © 1992 MG Co., Ltd. All rights reserved.