2003年5月号

「エムエスツデー」11周年記念のごあいさつ

 (株)エム・システム技研 代表取締役社長 宮 道   繁
 
 『エムエスツデー』読者の皆様、こんにちは。
 ついこの間、創刊10周年のごあいさつをしたばかりだと思いましたがもう1年が経ってしまいました。でもこの1年、世の中が大きく変わり、小泉改革がどの方向に向かうのか、またそれが私たちの日常生活にどのように関わってくるのか、大変気になるところです。
 いつまで続くデフレなのか、出口があるのかなどよくわからないことだらけですが、ただ言えることは、利益を上げ続ければ企業にとって何も起こらない、ということではないでしょうか。
 私はエム・システム技研を始めるに当たり、企業が利益を上げるということは何なのか、どうすれば利益が上がるのか、を考えないわけにはいきませんでした。
 価格とは何か、売価とは、流通価格とは…と考えている間に世間では希望小売り価格とかオープン価格などという言葉が使われるようになってきました。
 メーカーにとっては、売り値は高い方がよく、原価は安いにこしたことはありません。でも、お客様に納得してお買い上げいただき、良い買い物をしたとずっと思っていただけるようでなければ、売上げを上げ続けることはできません。製造原価を出荷価格で割った数値を原価率と呼ぶことにしますと、その原価率は低い方がよいということになります。原価率を下げる努力はどのメーカーも必死に行っています。
 それでもなかなか利益を上げさせてもらえないのが、今のデフレ環境なのだと思います。
 多くのメーカーは、人件費の安い中国で生産して競争力をつけようとしています。しかし、ライバルも同様に努力するためデフレを加速することになり、本質的な対策にはならないように思います。
 技術革新という言葉が、最近はあまり使われなくなりました。半導体技術や通信技術、バイオテクノロジーなどがあまりにも激しく技術革新を進めるので、わざわざ技術革新などといっても、それがどうした?と思うようになったのではないでしょうか。
 技術革新は、実は、私たち組み立て産業にとっては誠にありがたい利益の源泉を提供してくれます。
 とくに、私たちが主力マーケットにしている計装の世界では、その効果がよく現れているように思います。マーケットでの価格認識は、今まで購入してきた機器と同じ機能、同じ性能の新製品が、ぐんと小形になり取り扱い安くなっていれば、同じ価格であっても次の購入機会にはこの新製品にしようとするユーザーが多くなると思われますが、価格まで大巾に安くなるとすれば決定的です。
 その新製品の市場認知が進むにしたがって、ユーザーの歓迎するところとなり、旧製品にとって代わることになります。
 考えてみますと、電子部品(システムLSI、カスタムICなど)が劇的に高度化し、その部品が実現する機能に対しての価格および寸法が、1/10から1/100へとまるで魔法のように変わって行くのですが、その部品を使った製品を開発するには、それなりに高度な技術力を要求されます。高度化した部品を使いこなす技術力が実現する複雑高度な機能と、その新製品の使い易さとの相乗積が利益の源泉だということに気付かされます。
 部品が高度になりますと、エム・システム技研の資本力と技術力では商品化が難しかったものまでが新製品企画の対象となり、計装システムそのものの高度化に貢献できるようになってきたのだと言えるのではないでしょうか。
 振り返ってみますと、30年前の創業時のエム・システム技研は、それ以前は鉄の筺に収納され数キログラムもあった変換器を掌に載るプラグイン形にして発売し、好評を得ました。それは、オペアンプと呼ばれていたアナログICが200~300円で入手できるようになった時期と一致しています。その結果、零細企業のエム・システム技研にとって予想以上の大きな利益を得ることができました。
 次に、計装のため工場内にびっしりと複雑に張りめぐらされているキャブタイヤケーブルの価格合計が、コンピュータを含む計装機器全体の価格をはるかに上まわる事実があることに着目し、その改善を目指して計装信号用多重伝送装置(商品名DAST=Digital Analog Signal Transducer)を当時最先端のロジックICを組み合わせて発売しました。石油会社、セメント会社、紙会社、鉄鋼会社など広くお買い上げいただきました。これは今では新規需要がほとんどありませんが、水道局などから修理用とかリプレース用に時々ご注文をいただきます。部品調達に苦労はありますが、メーカーの務めとして、いつまでも供給体制を維持して行こうと努力しています。
 ついにワンチップ CPUが使い易くなり、インテル社から8ビットのワンチップCPUが発売されるに至って、当時数千万円もしたファームウェア開発ツールを思い切って購入し、M・UNIT変換器シリーズの中にマイコン搭載形変換器シリーズを加え、「スペックソフト形変換器」と名付けました。
 その後お客様のご要望にお応えする形で、ラック形変換器や薄形変換器、小形変換器へとそのシリーズを拡大して行きました。
 創業以来ほとんど生産中止する機種がないために、今では数千機種におよぶ変換器を供給するまでになりました。製品カタログの中心をなす仕様書集「MSS」は、今や5分冊で全体の厚さは17センチにもなっています。
 その次に、自律分散形ネットワーク計装システムをプラグインユニットのネットワーク接続で実現しようと、10年前では画期的なアイデアと考えてMsysNet計装部品シリーズを発売することになりました。こうなるとシステムLSIの威力をまざまざと見せつけられたことになります。
 しかしこのころから、小さなユニットの中に組み込まれたワンチップCPUを動かすソフトに内在する、バグの問題に悩まされることになりました。でも、お客様にしかられながらも会社を挙げて対策した結果、でき上がった商品群は安心して使える大きな財産となったことを実感しました。ネットワークには、そのころはオープン化されかつオーソライズされたネットワークがなかったので、自前で作ったNestBus、 M-Bus、L-Busと、少し遅いけれど遠くまで届くものから高速のEthernetベースのものまで取り揃えましたが、今では、Modbus、 DeviceNet、 CC-Link、 PROFIBUS、 LONWORKSなど、各種のオープンネットワークが発表され、それぞれが協会を設立して通信ソフトの検証機関までもっていて世界的に普及させる活動をしています。エム・システム技研は今までの経験を活かして、これらのオープンフィールドネットワークを使い、世界ですでに広く利用されている機器やソフトがそのまま利用できる超分散形ネットワーク計装機器シリーズの開発をすすめています。
 すでに「リモートI/O」の名称で、各種オープンネットワークで上位機器に結ぶ、各種アナログ信号、デジタル信号を変換伝送する便利なシリーズ製品を発売し、ご好評をいただいています。
 これからはインターネットの時代であり、インターネット計装システムが自由に組めるようにすることで新しい世界がひらけてくるものと思われます。
 エム・システム技研では、インターネット利用の計装信号伝送ユニットを、「Webテレメータ」や「FAXロガー」の名称で、すでにサンプル出荷を始めています。
 世の中ではIP電話の激戦が始まっており、IPv6のプロトコルによるユビキタス(遍在する、どこでもを意味するラテン語だそうです)時代が間もなくやってくるといわれています。
 私たちエム・システム技研は、このユビキタス時代にふさわしいユビキタス計装システムのご提案と、それを実現するためのプラグイン構造で、専門家でなくても容易に使いこなせる便利な機器群を提供できるような、そんな会社になって行きたいと考えています。
 読者の皆様には、この『エムエスツデー』もぜひ一つの情報媒体に加えていただき、引き続きご愛読いただきますようお願い申しあげます。 ■

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