2003年6月号 | ||||||||
海外マーケット事情あれこれ | ||||||||
(株)エム・システム技研 顧問 | ||||||||
不良債権処理、金融の安定化、税制改革、規制緩和と様々な対策案が出され、またその順序、タイミングについても論じられています。 仮に、日本の経済が立ち上がり始めたとしても、米国・欧州を始めITバブルの崩壊で我が国を後追いし始めた国々の影響を受け、再度、泥沼の停滞状態に引き戻されるであろうと厳しい見方をする意見もあります。 こうした状況において、経済状況がこれからどう進むのか、筆者などには、とても予測できる分析力と見識はありません。また、ここで論じるつもりもありません。
このように、好・不況はかつての高度成長時代やバブル期のように、全体が一様に同じ波に乗って展開する時代ではなくなってきたように思えます。時代の変遷を軸としても、国境を越えたエリアを軸にしても、一律に世界全体あるいは国単位で好・不況といえる状況ではなくなり、世界中で個々の企業レベル、あるいは特定の地域レベルにおいて、それぞれ強弱入り乱れて景気の良し悪しを競っています。 これは、かつての冷戦時代のように国家指導が主役であった時代とは異なり、ほとんどの国が資本主義経済を採り入れ、個々の企業がグローバルベースで主役となる時代に突入したためと思われます。まさに、一律から多様化の時代に移行してきたといえるでしょう。
その典型的な例が中国です。今や中国は世界で唯一元気の良い国、勝ち誇っている国といわれていますが、経済マーケットとして見る場合、その中身は実に千差万別・多種多様です。 エリアで見ても、東の沿岸地域、すなわち北京・上海・広州・深・香港などと内陸地域では同じ国かと思われるほど経済的に格差があります。 上海に行かれた方が一様に感じられることですが、長江に沿ったかつての租界地の対岸に開かれた、新開発区浦東にある高層ビル群を見れば、まさに世界有数の近代都市を象徴し、現中国の勢いが感じられます。一方、筆者は3年前、かつてのシルクロードに沿って内陸を中国最西端まで旅行しましたが、内陸部と沿岸部では、その生活レベルがまったく異なります。 エリアだけではなく、業種を特定しても、たとえば中国が世界最大の粗鋼生産量を誇る製鉄業を見ると、宝山グループの近代設備と他の旧国営企業の設備には大変な差があります。 自動車、石油化学など他の業種についても、同一業種内での企業間格差には相当なものがあります。 勝ち組の企業は、さらに国際競争に対応すべく、最新・最鋭の設備を導入し、品質・性能生産力に磨きをかけることでしょう。しかし、他の企業は財力もなく低コスト設備の導入で何とか当面をしのぐ展開となります。また、外資との提携もしくは外資そのものも加わり競争は激化し、国際競争のるつぼの様相を呈しています。 中国の生産財市場は、最新かつ高機能製品か、あるいは機能を抑えてでも低コスト優先にするか、いずれか両極端であるとよくいわれますが、この辺に理由があります。 当然、敗者は厳しい状況に立たされ、個別には整理・倒産も続出しています。好況と不況が混在しています。 一概に中国は景気が良いとか、この業種は発展しているとか、ひとくくりにはいえないところがあります。あくまで、個別の企業単位で捉えるべきかと思います。 お隣の韓国でも同じ展開となっています。韓国では、多数の財閥グループがそれぞれほとんどの業種に系列企業をもっています。しかし、国際競争に勝ちうる企業に原資を集中し、その他は整理・淘汰する傾向が見られます。 ヨーロッパでは、ユーロの誕生以来、通貨の統一ともあいまち、経済問題に関する限り、域内の融合・一体化は急速に拍車が掛かっています。それに伴い、域内での企業間競争はさらに激化、企業間の競争力格差は必然的に拡大しています。さらに、競争力を高めた企業の域外への進出意欲は強く 、中国・東南アジアなどへの展開は目覚ましいものがあります。他方、取り残された企業はいよいよ縮小への道を歩んでいます。 東南アジアを見ても、10年前までは、タイ・マレーシア・インドネシアなど、それぞれの国が、重化学産業、自動車産業、電気機器産業と、ほとんどの産業を同時に保有・展開していました。しかし、今や外資の思惑もからみ、中国との競争に耐える業種、たとえばタイの自動車工業、シンガポールのバイオケミカルなどに資本が集中しています。逆に耐えられない業種については、マレーシアの石油化学、インドネシアの紙パ産業からの台湾資本の撤退に見られるように、すでに、中国への資本移行が始まっています。つまり、時代の流れに乗り、より強力に展開している企業もあれば、そこから外され衰退に向かっている企業もあります。
そのため、海外マーケットを見るとき、往年のように、日の当たる国、成長期にある地域だけを包括的に眺めてすむ時代ではなくなりました。常に全世界を眺めると同時に、企業単位のつぶつぶでその景況を捉える必要が出てきました。 いうなれば、デジタルスキャナのように、全体をスキャンすると同時に、各々の詳細ポイントも的確に読みとるマーケティングが求められるようになってきたと思います。 エム・システム技研は、海外において約30か国、100社を超える代理店のお世話になっていますが、そこから提供される情報、要請には国とか地域に基づく特殊性はほとんど見当たりません。購入先の顧客もしくは代理店による特性、考え方の違いがあるだけです。 まさに国境がなくなり、グローバル時代が到来してきたことを実感します。そして、市場の大きさは一挙に拡大しています。言い換えれば、全体の好不況を論じる前に、個々の活況な企業だけに着目して世界規模で対応すれば大変な需要があるわけです。 ただし、同時に世界規模での競争の激化にさらされます。こうした中で、エレクトロニクス機器、自動車、カメラなど我が国の製品で海外市場で成功している製品に共通しているのは「こだわり」だと思います。我が国の厳しい市場で培われた、こだわってこだわって創られる機能・品質・納期・コストは、どのような時代でもどの国でもどの企業でも受け入れられ、膨大な需要に繋がります。ぜひ、この本格化してきた広大なグローバル市場の中で勝ち残りたいものです。 ■ |
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