1998年6月号

全電子式アクチュエータ

シンクロトップシリーズ

(形式:MRN1、MSN3)

(株)エム・システム技研 開発部
 
は じ め に

 エム・システム技研では、1985年以来、「サーボトップ」をはじめとする、全電子式アクチュエータを製造、販売してまいりました。なかでも「サーボトップ ミニ」シリーズは、軽量コンパクトなボディにもかかわらず、高出力のアクチュエータとしてご好評をいただいてまいりました。
 このたび、サーボトップおよびサーボトップミニシリーズに加え、電気的摺動接触部をなくして長寿命化を実現した「シンクロトップ」シリーズ(形式:MRN1およびMSN3)を開発しましたので、ここにその概要をご紹介します。

1.シンクロトップの概要と特長
 シンクロトップの外観と主な仕様を、図1および図2に示します。製品形式としては、90°回転タイプがMRN1、ストレートタイプがMSN3となっていますが、回路構成上には差がありません。ただし、ストレートタイプの場合は、モータの回転運動を直線運動に変換するねじ機構と、直線運動を回転運動に変換して、位置センサに伝達するためのリンク機構が加わります。
 シンクロトップの最大の特長は、電気的摺動接触部をなくし注1)、長寿命化を実現したことです。また、後述するように、採用したモータの性能ともあいまって、分解能が高くなったことも特長といえます。
 そのほか、従来機種と同様、異物噛み込みなどに起因するアクチュエータのロックなどの異常を検出する機能、不感帯を自動的に最適値に調整する機能などが盛り込まれています。
 それでは、シンクロトップの各部について、順を追って説明しましょう。

2.モータ
 モータには、大きく分けて直流モータと交流モータがあり、それぞれに一長一短があります。シンクロトップを開発するに当たって、モータを選定する際に考慮した第1の点は、ブラシレスであることでした。ブラシのないモータにも種々ありますが、このたびはシンクロナスモータ(同期モータ)を採用しました。
 ご存知のように、シンクロナスモータは交流モータに属します。一般的に、交流モータは、直流モータに比べて出力は劣るものの、元々ブラシレス構造であり、電気的摺動接触部をなくすために有効です。また、直流モータに比べて、停動トルクと定格トルクの比率が小さいため、バルブアクチュエータに用いた場合、異物噛み込みなどに起因するロック発生時に、過大トルクを発生してギヤ破損などを起こす可能性が低くなります。さらに、交流モータのなかでもシンクロナスモータは、電源周波数に比例してモータ回転速度を一定に保てるため、位置制御を行うアクチュエータ用として、都合のよい特性を有しています。
 ところで、シンクロナスモータにも種々のタイプがあります。そのなかで、インダクタ・シンクロナスモータ(永久磁石同期モータ)と呼ばれる方式は、ロータ(回転子)に永久磁石を使用し、他のシンクロナスモータに比べて、保持トルクが大きいという特長があります。言い換えれば、モータへの電源供給を停止すると、惰性で回転し続けることなく、直ちに停止するため、停止精度(分解能)の向上が期待できます。シンクロトップ用としては、このタイプのモータを採用しています。その結果、従来の機種注2)より優れた分解能(1/200)を実現できました。

3.ポジションセンサ
 アクチュエータの位置をフィードバックするための、ポジションセンサにも種々あります。その選定に当たっては、モータと同様に電気的摺動接触部のないことを条件とし、その結果、エム・システム技研の「インダクポット」(形式:NRA)を採用しました。インダクポットに関しては、過去に本誌にて紹介されています(1995年9月号10~13ページ)が、ここでも簡単に説明させていただきます。
 交流磁界の中にコイルを置くと、コイルに交流起電力が発生し、その起電力は、コイルの断面を横切る磁束の数に比例します。平行磁界の場合は、コイルの回転角度ではなく、その正弦に比例した出力になります。インダクポットでは、コイルの回転角度に比例した交流起電力が発生するように、磁界の形状を変形させています。この交流起電力を整流器を経て取出すと、回転角度に応じた直流電圧が得られます。コイルの回転角度が約110°に限定されているため、コイルの出力を取り出すのにブラシは不要です。実際には、コイルスプリング状のリード線により引き出されており、その機械的耐久性は1億回以上です注3)。
 インダクポットは、このようにして角度を電気信号に変換しており、MRN1ではアクチュエータの出力軸と1:1で接続され、MSN3ではリンク機構により、直線運動を回転運動に変換して接続されています。

4.その他の機能
 シンクロトップには、モータやセンサ以外にも様々な特長があります。
 第1の特長としては、異常検出タイマ回路が挙げられます。すなわちアクチュエータに与えられた入力信号によって決まる目標値に不感帯幅をプラス・マイナスした範囲内に、位置センサの値が一定時間以内に入らない場合、異常と判断してモータへの給電を停止する機能をもっています。目標範囲から遠ざかるような場合はあまりないと思いますが、目標範囲に近づかない状態は、異物噛み込みなどの事故が原因として考えられます。このような場合にモータへの給電を停止することにより、モータの過熱が防止されます。なお、万一このような状態になった場合にリセット(復帰)させるには、入力信号として4mA(1V)と20mA(5V)を数回交互に入れるか、一旦電源を切ります。
 特筆すべき第2の機能は、バンプレス(AUTO DZ)回路です。制御系のハンチングや調節計のサンプリング周期が短い場合など、アクチュエータが頻繁に起動、停止を繰り返す場合、すなわち不感帯に位置信号が頻繁に出入りする場合に、バンプレス回路によって自動的に不感帯幅を広くし、モータの起動回数を少なくします。その後、起動、停止が頻繁に繰り返さないなら、一旦広くなった不感帯幅は、設定した不感帯幅に戻るまで徐々に狭くなります。

お わ り に
 シンクロトップは、このほかにも様々な機能や特長をもっていますが、限られた誌面であるため、ここには紹介しつくせません。さらに詳しい資料をご希望の方は、エム・システム技研の営業部員にお申しつけください。      ■

*「サーボトップ」および「インダクポット」はエム・システム技研の登録商標です。

注1)全開全閉をシーケンサなどに知らせる信号としては、リレー接点出力を用います。
注2)サーボトップ(形式:BST1、BST2およびBST3)を除きます。
注3)インダクポット単体の耐久性能を示します。その条件は、回転軸に荷重がかからない状態で、1秒間に3往復(1往復=90°回転×2)以下の速度で回転させた場合です。

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