1998年8月号 | |||||||||
自動制御入門 第17回操 作 部(その2) | |||||||||
松山技術コンサルタント事務所 松山 裕 | |||||||||
12.2 調 節 弁(前回に続く) (3)Cv値と調節弁の流量特性 流体が流れる管路の途中を絞ると、ここに圧力損失が発生します。流量と圧力損失の間には、通常下記の関係があります。 流量=比例定数×(圧力損失)1/2 当然調節弁においても、この式が成立します。調節弁では、一定の条件におけるこの比例定数を、Cv値(シーブイチ)といいます。Cv値は、調節弁(valve)の流量係数(Flow Coefficient)の略で、調節弁の流量通過能力を意味します。 Cv値はアメリカで発表され、普及したため、下記のように定義されています。 「60゜F(15.6℃)の清水を、調節弁の入口-出口間に1psi(0.07kgf/cm2)の差圧をかけて流す。この場合の流量をUSガロン/minで表したときの数値をCv値という(USガロンは3.785l)。」日本では、これをメートル法に換算した下記の式によって定義されています。 Cv=1.17Q(G/△P)1/2 ただし、 Q:液体の体積流量〔m3/h〕 ΔP:弁前後の差圧〔kgf/cm2〕 G:液体の水に対する比重 逆にいえば、調節弁のCv値が既知であれば、上記の式より調節弁を通る流量が計算できます。 ここで説明したCv値は、開度100% (全開)のときだけでなく、各開度についても与えられています。すなわち各開度でのCv値は、調節弁前後の差圧が一定のとき弁を通過する流量を表します。調節弁開度とCv値との関係は調節弁の流量特性を表すものであり、制御システムにとって重要な特性です。 調節弁の一般的な流量特性は、リニア、イコールパーセント、クイックオープンの3種類です。リニア特性とイコールパーセント特性を図12.6に示します。リニア特性は図の①で、イコールパーセント特性は図の②です。これでわかるように、リニア特性はCv値が弁開度に対し比例的に変わる特性で、イコールパーセントはCv値が弁開度に対し対数的(等比率的)に変わる特性です。後者では、たとえば弁開度が30%から50%に変わるとき、および50%から70%に変わるときのいずれも、Cv値はほぼ倍になっています。なお、クイックオープン特性というのは要するにオンオフ特性です。弁開度が0%からちょっと開くとすぐに全開状態(Cv値が最大)となります。 以上述べた調節弁の流量特性は調節弁の固有特性といいますが、調節弁を実際のポンプ・配管系に設置したときは、このようにはなりません。前回説明したように、ポンプで発生した圧力差と、調節弁および配管系に発生した圧力損失が等しくなるように流量が決まるのです(ここでは静圧損は一応無視します)。調節弁開度が小さいときは、調節弁で発生する圧力損失が大きく、流量は弁の固有特性とほぼ同じとなります。しかし、調節弁開度が大きくなると、調節弁での圧力損失は小さくなり、流量は配管部の圧力損失に支配されます(前回の図12.4参照)。すなわち、調節弁をいくら開いても、流量はほとんど増加しません。そのため、実質的なCv値は弁開度が大きい所では頭打ちになります。その結果、イコールパーセント特性の調節弁は、リニア特性に近い特性になります。 しかし、配管が極めて短く、配管部での圧力損失が常に小さいポンプ・配管系では、流量は常に調節弁の固有特性どおりとなります。 以上の理由により、一般にはイコールパーセント特性の調節弁がよく使用されますが、配管部での圧力損失が小さい系ではリニア特性の調節弁が使用されます。 (4)調節弁のいろいろ 調節弁には、前回の図12.5に示したタイプのほかいろいろな原理・構造の製品があります。これを大きく弁本体(流体を絞る部分)と駆動部に分けて説明します。 主な弁本体の種類と説明を表12.2に示します。また主な駆動部の種類と説明を表12.3に示します。 ■ ◆ 参考・引用文献 ◆ 1)松山 裕:だれでもわかる自動制御、省エネルギーセンター(1992) |
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