1998年9月号 | |||||||
自動制御入門 最終回操 作 部(その4) | |||||||
松山技術コンサルタント事務所 松山 裕 | |||||||
12.4 台数切換制御1) 渦巻ポンプは、最大流量付近で効率が最大になり、流量が減少するにつれて効率が急速に落ちます。したがって、必要流量の時間的変動が大きく、かつ小流量で使用する時間が多いときは、1台の大きいポンプを使用すると平均効率はかなり悪くなります。そのため、複数の小さいポンプを並列に使用し、必要流量に対応してポンプの台数を増減する方式が、省エネルギーの見地から有利です。 一般的には、複数のポンプの合計吐出流量を流量計で測定し、この出力により各ポンプの起動・停止を行います。すなわち、流量を増加させるときは、1台 →2台 →3台と台数を増加させ、流量を減少させるときは、逆に3台 →2台 →1台と減らすのです。しかし、ポンプの切換点付近でポンプを頻繁に切換えることがないように、台数を増加させるときの切換え点と、減少させるときの切換え点の間に差をもうける(いわゆるヒステリシスをもうける)ことが必要です(図12.16)。 一方高架水槽に水を圧送するような場合は、ポンプの吐出圧力は常にかなり高いことが必要です。これは、静圧損が常に大きいためです。そのため、必要流量が減ってもポンプの回転数を落とすことはできません。このときは台数切換制御が有効です。高架水槽の液面制御の例を図12.17に示します。 12.5 電気エネルギーの操作2) 電気炉や恒温槽の温度制御においては、ヒータに流す電流(一般的にいえば電力)を操作します。このときに使用する操作部には、リレー、SSR、サイリスタがあります。 (1)リレー・SSR リレーは、接点を介してヒータに流す電流をオンオフする機器です。構造が簡単で安価ですので広く使用されていますが、電流のオンオフ時に接点が消耗しますので、寿命があります。そのため、接点のないSSR(ソリッドステートリレー)も多く使用されています。 SSRは、半導体で作られたリレーであり、可動部や接点がなく寿命は非常に長いので、温度制御用によく使用されます。SSRの回路構成は、入・出力間の絶縁の方式、ゼロクロスの有無、交流負荷用か直流負荷用かによって分けられます。交流負荷用の例を図12.18に示します。フォトカプラまたはフォトトライアックカプラにより、オン・オフの入力信号を伝達するとともに、入力と出力を絶縁します。ゼロクロスについては次項で説明します。トライアックは、交流回路をオンオフさせる半導体素子で、これを動作させるのがトリガ回路です。また、スナバー回路は、外部から加わるノイズを抑えてトライアックの誤動作を防ぐ回路です。なお、SSRは電流を多く流すと発熱するので、大電流用には放熱器を取付ける必要があります。 リレーには、ほかにハイブリッドリレーというものがあります。これはリレーとSSRを組合せたもので、接点をオンにするときにはトライアックに電流が流れるのでリレー接点の寿命が長く、定常通電時はリレー接点に電流が流れるのでSSRの発熱がないという両者の利点を併せもつ機器です。 (2)サイリスタ サイリスタは、電流を制御できるシリコン半導体素子の総称です。SCR(Silicon Controlled Rectifier)ともいわれます。サイリスタは、1本では直流または交流の半サイクル分しか制御できないので、交流回路を制御するときは2本の素子を逆並列に接続して使用します。トライアックは、サイリスタの一種ですが、1本で交流回路を制御できます。 サイリスタ自体は素子ですから、これだけでは操作部としては使えません。サイリスタを中核として、温度調節計からのDC4~20mAの信号を受けて、ヒータに流す電流を比例的に変えるように作られた装置をサイリスタ方式電力調整器といいますが、これを略して通称サイリスタユニットといいます。 サイリスタユニットには、小型軽量、大電流を制御可能、接点がなく長寿命という特長があります。一面サイリスタに電流を流すとかなり発熱します。そのため大電流用では、空冷または水冷が必要となります。 サイリスタユニットによる電流制御の方式には、位相制御とゼロクロス制御があります。位相制御は、交流半周期の中でオンにする位相を変えて実質的な電流値を変える方式です。図12.19に原理図を示します。トリガ信号というのは、サイリスタをオンにするための信号です。位相制御には、操作部としての応答が速く分解能が無限大という特長はありますが、大きい高周波ノイズを発生させるという欠点があります。一方ゼロクロス制御では、交流の各サイクルにおいて電圧がゼロのときオンにし、電流がゼロのときオフにする回路を組込んでいます。そのため高周波ノイズの発生は防げますが、半サイクル単位でしか制御できないので、分解能がやや悪いという欠点があります。 * * * 19回続けたこの連載は、予定していたテーマを書き終えましたので、これで終了といたします。永い間のご愛読ありがとうございました。連載の内容についてご意見・ご質問あらば、何なりとFAXにてお知らせください。 ■ ◆ 参考・引用文献 ◆ 1)松山 裕:流体操作技術、省エネルギー、Vol. 45、No. 10、p. 90~96(1993) 2)松山 裕:温度の測定と制御、省エ ネルギーセンター(1989) 3)オムロンカタログ:ソリッドステー ト・リレー(1997) |
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