制御
エムエスツデー 1996年4月号
ワンループ・コントローラと温調計の違い
工業計器メーカーが販売しているワンループ・コントローラは大変高価なため、代わりに温調計が使えないかと考える人は多いと思います。
価格と生産台数
ワンループ・コントローラは50~80万円、アナログ出力形温調計は5~10万円で、10倍の価格差があります。一方、ワンループ・コントローラの国内需要は月間千台程度、温調計は二桁上の台数が売れています。
ワンループ・コントローラの歴史
ルーツは、50年以上前の丸形記録紙の機械式PID調節計にさかのぼります。それが空気圧式調節計に代わり、さらに半導体の進歩によりトランジスタ式、アナログIC式、マイコンを利用したワンループ・コントローラへと進化してきました。
温調計の歴史
これも50年以上の歴史を持っています。熱電対や測温抵抗体の信号を直接入力して可動コイル式指示計で温度を表示し、オンオフ制御を行ったのが、温調計(温度調節計)の始まりです。
これが半導体回路によるオンオフ制御方式に代わり、さらに、マイコンによるデジタル指示付のオンオフ調節計になりました。温調計にはたくさんのバリエーションがありますが、4~20mA DC出力のPID調節計もその1つです。
プロセス計装用調節計の基本機能
① バーグラフ指示
プロセス計装用の計器盤には、数10台の調節計が多連取付されています。オペレータは、これらをパターン認識により監視しているので、「縦形バーグラフ指示計」が極めて重要です。
② 手動操作機能
プロセス計装では、プラント起動時に測定値が設定値に近づくまで手動操作を行い、偏差が少なくなった時点でPID制御状態に切り換えます。このために手動操作機能が必須です。
温調計の出番
プロセス計装分野で使用されるPID調節計の90%以上が「単純PID制御」と言われています。バーグラフ指示方式でないことを我慢すれば、この応用分野ではコストの安い温調計が使用可能です。
表 ワンループ・コントローラと温調計の比較
比較項目 | ワンループ・コントローラ | 温調計(4~20 mA DC出力形) |
主な用途 価 格 指示方式 |
PA(プロセスオートメーション) 50~80万円 縦形バーグラフ指示 |
FA(ファクトリーオートメーション) 5~10万円 デジタル指示 |
手動操作 | 必ず付く | 付かないものが多い |
制御機能 | PID制御ループ:2個 演算器:5~100個 シーケンス制御:あり |
PID制御ループ:1個 |
温度直入力回路 | オプション | 必ず付く |
入出力点数 | アナログ入力:2~8点 アナログ出力:1~4点 接点入出力合計:6~12点 |
アナログ入力:1点 アナログ出力:1点 警報接点:2点 |
図 次世代の
ワンループ・コントローラ
(形式:ABA、価格:15万円)
次世代のワンループ・コントローラ
エム・システム技研が新しく開発したワンループ・コントローラ(形式:ABA、15万円)は、温調計と類似の価格帯で、しかも、従来のワンループ・コントローラと同等以上の制御機能を持つ製品です。
これで、まず、ワンループ・コントローラのコストの問題が解消できます。さらに、温調計とシーケンサを組み合わせてバッチ制御を行っていたケースで、温調計の機能不足のため困っていた問題が解消できます。また、ABAはCRTオペレーションを前提に設計してあるため、極めて低コストでDCSに移行できます。