制御
エムエスツデー 1997年7月号
旧アナログ形コントローラの諸機能
アンチリセットワインドアップ
これは最近のマイコンを使用したコントローラでは使われていない機能であり、信号処理回路がコンデンサや抵抗で構成されている従来のアナログ形コントローラで必要な機能です。
アナログ形コントローラで、偏差が発生しPID演算する際に、出力信号(MV)が上限または下限に振り切った場合、回路で使用している積分コンデンサに影響が現れます。MVが振り切らない場合には、適当な電荷がコンデンサに蓄えられ、正常な演算が行われます。MVが振り切った状態では、積分コンデンサに大量の電荷が蓄積されることになります。この状態から正常な範囲に向けてコントロールが行われるとき、この積分コンデンサが放電するまでにかなりの時間を要します。この時間に達するまで、MV出力は正常範囲に戻らず、振り切った状態が続きます。この積分コンデンサを短時間で放電させるようにする回路を「アンチリセットワインドアップ回路」といいます。
最近のコントローラでは、デジタル演算を行っているため「積分コンデンサ」は使用されていません。積分項の値もデジタルで演算しているため自由に数値を選べます。アナログ回路で生ずるコンデンサの充放電時間は発生せず、アンチリセットワインドアップを考慮する必要がありません。
バランスレスバンプレス
これもアナログ形コントローラで必要な機能であり、現在のデジタル形コントローラでも実現されています。
アナログ形コントローラでは、PID演算によって得られたコントロール出力(MV)については、手動モードでそれを操作しようとした場合とは独立した回路が組まれています。このため、自動から手動への切換時には、手動操作出力をあらかじめ手動でPID出力値に合わせた後、切換えて手動操作へ移行します。
また、手動から自動に切換えるときにも、同様な操作を行う必要がありました。後期のアナログ形コントローラでは回路に工夫が施され、自動回路の信号と手動信号が切換時に自動的に同一出力になるように改善されました。
自動→手動、手動→自動に切換える場合に、MV値を突変することなく切換えられるようにすることを「バランスレスバンプレス」といいます。
最近のコントローラでは、デジタル演算ですべての信号処理が行われているため、切換時に自動出力に簡単に合わせることができます。したがって、現在ではこの言葉は死語になりつつあります。
外部リセット
調節計を外部信号と接続した場合に、調節計の信号を外部信号に合わせておく場合があります。つまり、切換時に調節計がすぐに動作させられる状態に(トラッキング)しておくわけです。この場合に、積分回路が利いているとうまくトラッキングすることができません。そのため、外部からの信号で積分回路をリセットしてトラッキングを動作させるようにするのが外部リセットです。
デジタル演算を行っている現在の調節計でも、この機能をもっているものがあります。