エムエスツデー 1997年2月号

計装豆知識

一次遅れ要素と時定数印刷用PDFはこちら

自然界には、一次遅れ要素がわかると理解しやすい現象がたくさんあります。とくに計装の分野でプロセス特性を理解するとき、大変便利な概念です。一次遅れ要素は、「1つの抵抗と1つの容量」で構成されています。以下に一次遅れ要素の具体例を示します。

例1・・・電車に乗り込む早さ

混んだ電車に毎日乗って通勤する人にとって、一次遅れ現象は身近なものでしょう。この例では、電車のドアーが‘抵抗’で車室が‘容量’になる一次遅れ要素と考えられます。

ホームに待っている人々の力で、前に待っている人々はかなりの力で車内に押し込まれ、勢いよく詰め込まれ始めます。しかし、乗客が入れば入るほど後ろの乗客に背圧をおよぼすので、乗り込む速度が遅くなります。このとき、経過時間と共に時間当たりの電車内の乗客数は、下図に示すように変化します。

電車に乗り込む早さ

例2・・・弁とタンク

弁とタンク

弁を開けて左側のタンクから右側のタンクに水を流すとき、右側のタンクの水位が上昇する速度を考えてみます。最初は左右のタンクの水位差が大きいので、右側のタンクの水位は早い速度で上昇し始めます。時間と共に水位差が少なくなると、水位の上昇速度は遅くなって行きます。

例3・・・抵抗とコンデンサ

抵抗とコンデンサ

上に示す電気回路で、スイッチがオンになると抵抗を介して電流が流れはじめてコンデンサの両端の電圧ECは急速に上昇し始めます。時間と共に定電圧源の電圧ESとの差が少なくなり、ECの電圧の上昇速度は遅くなって行きます。

時定数

時定数

一次遅れ要素は指数関数特性で変化するために、変化の早さを一言で示す目安が欲しくなります。この変化の目安を示す指標が「時定数」です。

時定数は立ち上がり(0%)時の傾斜のまま最終点(100%)まで到達したと仮定した時間で表現します(右図)。しかし、実測により立ち上がり時の傾斜から時定数を正確に求めるのは困難です。そこで一次遅れの計算式から時定数に相当する時間経過したときの値を求めると約63%になるので、通常は63%に到達する時間を計って時定数を求めます。


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