通信/ネットワーク
- IPv6/2002.11
- IPアドレス/2005.7
- RS-232/485規格/1999.9
- イーサネット/1999.10
- EtherNet/IP、EtherCAT/2011.7
- Ethernetケーブルとハブ(HUB)/2002.6
- 一般電話回線/2002.5
- インターネットとイントラネット(1)/2001.12
- インターネットとイントラネット(2)/2002.1
- ADSL/2002.10
- SLMPについて/2001.1
- FL-net(OPCN-2)/2005.8
- HDMI製品の開発プロセスについて/2020.4
- HLS(Hi-speedLink System)/2010.10
- OPC(OLE for Process Control)/1997.10
- 画像データの圧縮技術/1999.8
- 920MHz帯無線通信について/2015.10
- 携帯電話とメール機能/2002.4
- CC-Link/2000.2
- CC-Link IE TSNについて/2020.10
- CC-Link Ver.2.0/2005.2
- セキュア通信について/2020.7
- 専用電話回線と避雷器(1)/2008.9
- 専用電話回線と避雷器(2)/2008.10
- 全二重通信方式と半二重通信方式/1996.2
- ダイヤルアップルータとブロードバンドルータ/2003.3
- 通信ケーブルのシールド線の配線処理/2012.1
- TCPとUDP/2002.2
- データ伝送速度の単位“bps”と“ボー”/1993.11
- デジタル簡易無線/2015.7
- テレメータ装置と専用電話回線/2002.3
- DeviceNet/2000.1
- DNS(Domain Name System)/2006.10
- 特定小電力無線局/2003.11
- DoPa/2003.6
- ネットワークトポロジ/2002.8
- HART(ハート信号)(1)/1998.11
- HART(ハート信号)(2)/1998.12
- HART7(1)/2014.10
- HART7(2)/2015.1
- BACnet(1)/2007.8
- BACnet(2)/2007.9
- BACnet MS/TP/2018.7
- PoE(IEEE802.3af)/
2009.12 - FLEX NETWORK/2009.11
- フィールドバスの現状と問題/1996.12
- PROFIBUS(プロフィバス)/1999.12
- PROFIBUS-DPV1/2005.3
- PROFIBUS-PA/2005.6
- MECHATROLINK-II/2008.12
- MECHATROLINK-III/2009.3
- Modbus(モドバス)/1999.11
- USB/2003.9
- リアルタイムOS/2007.2
- LONWORKSについて/2001.11
- Wi-Fi(ワイファイ)/2013.7
- WirelessHART とISA100(その1)/2016.10
- WirelessHART とISA100(その2)/2017.1
エムエスツデー 2015年1月号
HART7(その2)
前回に引続き、HART7 通信プロトコルの機能を説明します。
HART7の主な機能
HART通信プロトコル Revision 6、7で追加された機能を説明します。主な機能を表1に示します。
主なHART通信プロトコル機能 | Revision | ||
---|---|---|---|
6 | 7 | ||
1 | Long Tag(32文字) | ![]() |
![]() |
2 | Configuration Change Counter | ![]() |
![]() |
3 | Extended Device Status | ![]() |
![]() |
4 | Device Variables with Status | ![]() |
![]() |
5 | Multiple Analog Outputs | ![]() |
![]() |
6 | Burst Message | ![]() |
![]() |
7 | I/O Systems and Sub-Device | ![]() |
![]() |
8 | Block Data Transfer(ブロックデータ転送) | ![]() |
![]() |
9 | Condensed Status (NAMUR*1 NE 107*2) | ![]() |
|
10 | Event Notification | ![]() |
|
11 | Data Trend | ![]() |
|
12 | Synchronized Device Actions | ![]() |
|
13 | Read Aggregated Command | ![]() |
|
14 | Catch Device Variable | ![]() |
|
15 | Wireless | ![]() |
(HART協会の資料をベースにエム・システム技研独自に作成)
(1)Long Tag
HART機器の普及に伴い、ユーザーからの強い要求により、32文字長のLong Tagが追加されました。すべてのデバイスに必須な機能です。
(2)Configuration Change Counter
デバイスの各種のパラメータ(構成情報)の変更を記録するカウンタであり、変更作業は1回でも同時に複数のパラメータ(たとえば3種のパラメータ)を変更した場合のカウント数は+3になります。このカウンタによって、構成情報のバージョン番号が示されます。
(3)Extended Device Status & (9)Condensed Status
従来のデバイスステータスに加えて、拡張デバイスステータスが追加されました。この中にNAMUR*1 NE 107*2に準拠したCondensed Statusが定義されました。多種多岐にわたる診断結果や異常状態は、そのままではユーザーがとるべきアクションを混乱させてしまいます。そこでNAMUR NE 107では、F=Failure、C=Function Check、S=Out Of Specification、M=Maintenance Requiredの4つのステータスを定め、診断結果や異常状態をそれぞれこの4つのステータスに割付けて集約することを定めたものです。表示上の色や形なども定めていますから、ユーザーのとるべきアクションが容易に決められます。診断結果や異常状態を、4つのステータスのどれに割付けて集約する(マッピングする)かは、プラントやユーザーによって異なります。したがって、NAMUR NE 107に準拠するためには、ユーザーがマッピングを設定できなければなりません。
(4)Device Variables with Status
デバイス固有のダイナミック変数をDevice Variablesとして統一的に管理(設定、校正など)します。Dynamic Variable(PV、SV、TV、 QV)へのマッピングが可能です。各Device Variableには、品質情報(Good、Poor、Bad、Fixed)が付加されます。
HART7では、Device Variable番号、244 = Percent Range、245 = Loop Current、246 = Primary Variable、247 = Secondary Variable、248 = Tertiary Variable、249 = Quaternary Variableが必須となりました。
(5)Multiple Analog Outputs
複数チャネルのアナログ出力の属性、ループチェックやトリミングなどの機能を統一的に管理する機能です。
(6)Burst Message
マスタは、Burst Messageの条件を設定しBurstモードにします。スレーブ機器は、条件が満たされたとき、自動的にMessageを発信します。マスタから要求メッセージを送信することなく、Burst Messageを受信するだけで、スレーブ機器のプロセス値や診断情報を収集できます。WirelessデバイスやAdapterでは必須機能です。
(7)I/O Systems and Sub-Device
HARTネットワークをサポートするI/O Systemです。I/O Systemは複数のI/Oカードを持ち、各I/Oカードは、複数のHARTサブネットワーク・チャネルを持っています。さらに各HARTサブネットワークは1つ以上のサブ・デバイス(HART Slave Device)で構成されます。サブ・デバイスとの通信は、I/O Card番号、チャネル番号、サブ・デバイスのアドレスを用いて行われます。AdapterやGatewayでは必須機能です。
(8)Block Data Transfer
マスタとスレーブ間で、Portをオープンし、コネクションを確立した後、データをストリーム伝送する機能です。これにより高速に多量のデータ伝送が可能になります。
(10)Event Notification
Event Notificationは、デバイスのステータスの変化(Event)を発信します。監視するステータスは、Device StatusとAdditional Device Statusです。それらの中で監視が必要なステータスを選択します。また、発信のタイミングを指定することができます。Eventの確認コマンドを受信するまで、繰り返し発信します。
(11)Data Trend
デバイス変数の値を指定周期で収集し、デバイス内のトレンドバッファに保存します。保存したトレンドデータを読み出すことができます。
(12)Synchronized Device Actions
設定条件に同期して、自動的に指定コマンドを実行するための機能です。
(13)Read Aggregated Command
オーバーヘッドの低減や通信速度の向上のために、複数のHARTコマンドを一回の通信で実行するためのコマンドです。Wirelessデバイス、AdapterやGatewayでは必須機能です。
(14)Catch Device Variable
同じHARTネットワーク内にあるデバイス間でのデータの共有を可能にします。すなわち、他のデバイスのプロセスデータを用いて、自己のプロセスデータの計算を行うなどの機能を実現できます。
(15)Wireless
無線通信に関わる、物理層、データリンク層、ネットワーク層、ネットワーク管理層の各層のコマンドを定義し、WirelessHARTネットワークを実現しています。WirelessHARTネットワークにおいては、無線対応したデバイスも当然ですが、Gateway、Network Manager、Adapterが重要なコンポーネントになります。Gatewayは、上位のシステムとWirelessHARTネットワークを接続します。Network ManagerはWirelessHARTネットワークの各種管理を行います。Adapterは、無線対応していないHART機器をWirelessHARTネットワークの世界に導きます。
* * *
HART7において、Wirelessデバイス、I/Oシステム、サブ・デバイスなどサポート範囲が拡大され、以上のように大幅な機能アップがなされました。
フィールド機器のネットワーク化において、ますます重要な通信方式になってくるでしょう。
*1 NAMUR:An international association of users of automation in process industries
1949年ドイツで設立。設立時の主体は化学・薬品製品のメーカー、ユーザーである。
2014年現在137社が加盟している。
http://www.namur.net
*2 NE 107(2006-06-12):フィールド機器の自己監視・診断機能に関する要求仕様。
【(株)エム・システム技研 開発部】