2016-2017 計装豆知識
エムエスツデー 2017年1月号
WirelessHARTとISA100(その2)
今回は無線ネットワーク WirelessHARTとISA100のネットワーク構成を比較してご紹介します。
WirelessHARTとISA100のネットワーク構成を以下に示します。
WirelessHARTのネットワーク構成*1
- Wireless Adapter(ワイヤレス・アダプタ):既存のWired HARTデバイスを無線環境に接続するためのアダプタです。
- WirelessHART Field Device:WirelessHART認証のフィールドデバイスです。データを目的地まで送信するために、無線ネットワーク上のデータ配送経路を決定する経路制御機能であるルーティング機能も必須になります。
- Wireless Handheld Device:プラントエンジニアやサービスエンジニアが現場に携帯して、機器のメンテナンスなどを行うための無線携帯機器です。
- Access Point:無線環境とGatewayを接続するための機器です。
- Security Manager:ネットワーク内のデバイスのセキュリティ管理、制御などを実行します。
- Network Manager:デバイス間の通信スケジュールやメッセージ経路の管理などネットワークの設定や整合性の監視などを実行します。
- Gateway:サブネットの機器を高速バックボーン(基幹)回線あるいはプラント通信ネットワークに接続されているホストアプリケーションと接続します。
- Gateway、Network Manager、Security Manager:1つの機器上に搭載することが可能です。
- HART-IP:インターネット・プロトコル(IP)ネットワーク上でHARTデバイスとの通信を実現するための、通信プロトコルです。
ISA100ネットワーク構成*2
- Non-routing Device:フィールドと入出力を行う無線対応デバイスで、ルーティング機能は有していません。上位システムと無線接続を行うためには、Routing Deviceが必要になります。
- Routing Device:無線サブネット内の他の機器に対してメッセージをルーティングするデバイスです。
- Wireless Handheld Device:プラントエンジニアやサービスエンジニアが現場に携帯して、機器のメンテナンス等を行うための機器です。
- System Manager:ネットワーク内の全てのデバイス対して、データ収集の周期、優先度、チャネル・ホッピングのシーケンスやメッシュネットワークの経路情報などの管理を実行します。
- Security Manager:ネットワーク内の全てのデバイス対して、セキュリティの管理、制御などを実行します。
- Gateway:無線ネットワークとプラントネットワーク間のプロトコル変換を実行します。
- Backborn Router:Gatewayとの接続を可能にするとともに、IPv6*3を使って、サブネット間のパケットをルーティング、工場内の地理的に離れた場所のサブネットをバックボーンルータで接続することにより、広範囲のプラントネットワークの容易な構築を可能にします。WirelessHARTは、Backborn Router的なメカニズムは提供していませんから、Gatewayを介してHART-IPを用いてバックボーンを構築する必要があります。
まとめ
WirelessHARTもISA100も共通の最新無線技術を用いています。しかし、WirelessHARTは、HARTプロトコルに特化しているため、既存のツールや通信プロトコルが使えます。したがって、導入や構築が容易です。
ISA100は各種既存のフィールドバス通信プロトコルを実現可能にするユニバーサルな無線規格といえます。さらにISA100は、IPv6を採用しているため、IoT(Internet of Things)を容易に実現できます。このようにISA100は、アプリケーションに対して柔軟性の高い規格です。ただし、普及を促進するためにはアプリケーションレベルの標準化・規格化が重要になってきます。
<参考文献>
*1 ・http://en.hartcomm.org/
・http://jp.hartcomm.org/hcp/tech/wihart/wireless_how_it_works.html
・A Comparison of WirelessHART and ISA100.11a
*2 ・http://www.isa100wci.org
・The Technology Behind the ISA100.11a Standard – An Exploration
*3 IPv6(Internet Protocol Version 6)
インターネット上で通信するためには、コンピュータやその他のデバイスに送信者アドレスや受信者アドレスが必要です。これらの数値アドレスは、インターネットプロトコルアドレスとして知られています。現在主流のインターネットプロトコルである IPv4のアドレスの長さは、以下の例のように32ビットで、4.3×108個まで指定できます。
172.16.254.1
インターネットとその利用者の急激な拡大に伴い、IPアドレスの需要も増大しています。IPv6は、現在主流のインターネットプロトコルである IPv4にかわるものとして設計された、次世代のインターネットプロトコルです。
IPv6のアドレスの長さは以下の例のように128ビットで、3.4×1038個まで指定できます。
2001:0DB8:FFFC:0001:0201:02CD:AB03:0405
【(株)エム・システム技研 開発部】