エムエスツデー 2008年5月号

テレメータ D3シリーズ(3)
− ツイストペア線テレメータ(D3-LT5、D3-LT6)−
(株)エム・システム技研 開発部
は じ め に
前回の「テレメータ D3シリーズ(2)」では、NTT専用回線の代わりに無線データ通信モデム(形式:RMD2)を用いたD3シリーズテレメータをご紹介しました。
今回はNTT専用回線の代わりにツイストペア線を用いるD3シリーズテレメータの「10km対応通信カード(形式:D3-LT5、D3-LT6)」をご紹介します(図1)。
D3-LT5、D3-LT6は、通信速度が可変になっていて、伝送距離最長10kmまでの通信が可能です(表1)。
この製品はエム・システム技研が30年前に開発したDASTシリーズの後継機種として準備したものです。現在も多くのお客様にご使用いただいているDASTシリーズでは製造中止部品が多数発生しています。また、RoHS指令注1)への対応問題などもあり、DASTの後継機種としてD3-LT5、D3-LT6を開発しました。

表1 D3-LT5、D3-LT6の伝送距離
通信速度 | 伝送距離 |
50 bps 時 |
10 km 以下 |
300 bps 時 |
8 km 以下 |
1200 bps 時 |
6 km 以下 |
4800 bps 時 |
4 km 以下 |
9600 bps 時 |
3 km 以下 |
19.2 kbps 時 |
2.5 km 以下 |
38.4 kbps 時 |
1.5 km 以下 |
1.D3-LT5、D3-LT6の概要
D3-LT5、D3-LT6はシリアル通信コネクタ(RS-485)を備えたテレメータカードです。長距離通信を可能にするため、出力部はディスクリート回路で構成されています。
また、ノイズなどによる誤出力を防止するため、誤り検出符号CRC16によって異常検出を行っています。
D3-LT5では1:1通信、D3-LT6では1:nの通信が可能です。
2.D3-LT5の設定
D3-LT5の主要な設定は側面と前面のディップスイッチ注2)によって行います(図2)。
複雑な設定を必要としないため、容易にシステムを立ち上げることが可能です。
・伝送速度設定(SW6)
通信速度を設定します。
・上位書込設定(SW1、2)
通信カードを用い、PLCやPCから各スロットの出力カードへの書込みを有効/無効にします。相手局の同一スロットに入力カードが実装されていない場合に限って設定可能です。
・機能設定(SW3)
マスタ/スレーブ切換
LED表示切換
3.1:1通信システム構成例
ここでご紹介するシステムでは、PLC監視、1:1通信を実現しています(図3)。
D3-LT5を用いることによって、ツイストペア線を使ってのテレメータが可能です。工場内の既設電線を用いることによって、信号の入出力が容易に行え、PLCやPCによる監視が可能です。また、入出力の追加が容易であり、スレーブ局をそのまま利用し1:n通信も可能になります。
4.1:n通信システム構成例
ここでご紹介するシステムでは、PLC監視、1:n通信を実現しています(図4)。
マスタ局としてPCへ接続するためにModbus用 通信カード(形式:D3-NM2)またはModbus/TCP用 通信カード(形式:D3-NE2)を、さらにスレーブ局との通信のために複数のD3-LT6を実装します。
スレーブ局には1:1通信の場合と同じD3-LT5を用います。
PCにとっては、スレーブ局がModbus通信の1局として動作します。マスタ局とスレーブ局は常に通信を行っているため、PCは待ち時間がない状態でスレーブ局のデータを受け取ることが可能です。
おわりに
NTT専用回線用のテレメータカードである1200bps通信カード(形式:D3-LT1、D3-LT3)および50bps通信カード(形式:D3-LT2、D3-LT4)を使えば、工場内での私設線を用いたテレメータを実現できます。
予備の構内電話線などでは、1200bps(D3-LT1、D3-LT3)の通信が可能です。
また電話線以外では、50bps(D3-LT2、D3-LT4)の通信が可能になります。
注1)RoHS指令(特定有害物質の使用規制)の詳細については『エムエスツデー』誌2005年 1月号「計装豆知識」をご参照ください。
注2)ディップスイッチ設定の詳細については仕様書をご参照ください。