BA(ビルディングオートメーション)の空調自動制御
インバータ(2)

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(株)エムジー BA事業部

今回はビルの冷温水搬送設備とインバータについて解説します。

1.ビルの冷温水搬送設備

セントラル空調方式のビルでは、冷暖房の熱媒体として、熱源(*1)で作られる冷水や温水をポンプで各階にある負荷設備(空調機やファンコイルユニットなど)に送っています。図1はセントラル空調方式での冷水の一般的な搬送設備の系統図です。温水の場合も冷凍機が温水熱交換器やヒートポンプチラーなどの温熱源に代わるだけで、ポンプや配管の構成はほとんど同じです。
図1において冷房に伴う空調負荷は、季節、天候、時間帯、人数、方位(居室が南側か北側かなど)などにより時々刻々変化しています。そのため、負荷設備が要求する熱量(冷水の流量と往き還りの温度差の積)も常に変化するため、その負荷に見合った流量の冷水を熱源から負荷設備へ送る必要があります。各階の負荷設備に冷水を送る役割を果たしているのが冷水2次ポンプです。

図1 セントラル空調方式の冷水の一般的な搬送設備系統図
図1 セントラル空調方式の冷水の一般的な搬送設備系統図
(*1)熱源
ビルの空調設備では、冷水を作る冷凍機や温水や蒸気を作るボイラ、およびそれらを搬送するポンプや熱交換器などの設備全般を熱源と称しています。一般的にはビルの地下階に熱源設備を設置しますが、中規模以下のビルでは屋上に熱源設備を設置する場合もあります。また、熱媒体の水は比重が大きいため、高層ビルでは中間階にブースターポンプを設置したサブ熱源設備を置くこともあります。都市部に多い地域冷暖房システムでは、地域冷暖房施設から冷水や温水または蒸気の供給を受け入れるので、ビルに冷凍機やボイラといった設備はもたず、冷水や温水、または蒸気の受け入れ設備および搬送設備がそのビルの熱源になります。


①ポンプ台数制御

図2はポンプの台数制御の構成です。還り配管に取付けられた流量計で負荷設備の要求する冷水流量を計測して、適切な台数の冷水2次ポンプの運転と停止を、ポンプ台数制御コントローラが自動で行います。運転中のポンプは常に100%運転なので、余った冷水は冷水2次往ヘッダからバイパス弁を通して冷水1次往ヘッダに戻して、冷水2次往ヘッダの圧力を一定に保つとともに、負荷設備に送る冷水流量を調整しています。ポンプ台数制御では、軽負荷時にポンプの運転台数が減少するので、その分、省エネルギーになりますが、ポンプ台数は一般的なビルで2台から4台程度なので、数段の段階的なエネルギーの削減しかできません。

図2 ポンプ台数制御(2次往ヘッダ一定圧力制御)
図2 ポンプ台数制御(2次往ヘッダ一定圧力制御)


②ポンプ台数制御+インバータ制御

図3はポンプ台数制御とインバータによるポンプ回転数制御を組合せた構成です。還り配管に取付けられた流量計の計測値に合わせて、インバータでポンプの回転数制御を行うためバイパス弁はほとんど閉の状態であり、負荷設備側の要求する冷水を効率的に送ることができます。バイパス弁はポンプ1台が最小流量で運転しても冷水が余ってしまうとき(夜間残業などの軽負荷時)に開きます。また、負荷側の流量に合わせて、冷水2次往ヘッダの圧力を適正な値にカスケード制御する変圧力制御を行うことにより、ポンプの回転数可変範囲を広くでき、重負荷から軽負荷まで対応した省エネルギー効果の高い制御が可能となります。現在ではセントラル空調方式のほとんどのビルで、この方式が採用されています。

図3 ポンプ台数制御+インバータ制御(負荷流量による2次往ヘッダ変圧力制御)
図3 ポンプ台数制御+インバータ制御(負荷流量による2次往ヘッダ変圧力制御)

2.インバータの効用

さらにインバータの効用として、ポンプの始動時に低回転からゆっくり回転速度を上げていくので、ウォーターハンマー(水撃現象)がほとんど起こらず、ポンプ始動時の衝撃から配管を守る効果もあります(図4)。

電動機の軸出力(出力軸のトルクと角速度の積)は軸回転数の3乗に比例する特性から、一定回転で運転する電動機に比べ、インバータなら低回転領域で大幅な消費電力の削減ができます。
ビル空調の分野でも、今まで解説してきた空調機変風量制御や今回の冷温水搬送設備の変流量制御以外に、冷凍機冷却水の変流量制御などにもインバータが採用され、省エネルギーに貢献しています。

図4 ウォーターハンマー(水撃現象)
図4 ウォーターハンマー(水撃現象)

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