計装豆知識
セントラル空調の冷温水搬送システム(2)
(株)エムジー BA事業部
1.配管抵抗
水が流れる配管内には様々な抵抗があり、水を流すとその抵抗部分で圧力損失が生じます。主な抵抗にはエルボやレデューサ、ストレーナ、仕切弁、コイル、制御弁などがあり、その部分に水が流れるとそこで圧力損失が生じます(図1)。また配管の直管部分でも、内壁と水の間に流れと反対方向の摩擦力が生じ圧力損失が発生します。その配管抵抗は流速の2乗に比例するので、配管径が一定であれば流量が多くなると配管抵抗は指数関数的に増加します。
図1 配管抵抗
2.ヘッダ間の差圧
配管内に水を流すためには、ポンプを使って配管抵抗より大きな圧力で水を押し出さなければなりません。空調配管の場合、縦配管である主管にはエルボなどの抵抗分が少なく、また、配管中の水の流速は2[m/秒]程度とあまり速くないので、配管抵抗のほとんどは、主管から分かれた枝管にあるコイルや制御弁などになります(図2)。枝管にあるストレーナやコイル、仕切弁、制御弁などの配管抵抗による圧力損失の合計は通常150[kPa]程度なので、往ヘッダの圧力を還ヘッダの圧力より150[kPa]以上高くすれば、全体に水を循環させることができます。セントラル空調方式の一般的なビルでは、往ヘッダと還ヘッダの圧力差が200[kPa]程度になるように制御しています。
図2 ヘッダ間の差圧
3.密閉式配管システムの圧力制御
①1次ポンプシステム
中規模以下のセントラル空調に採用されているワンポンプシステムの場合は、差圧調節器(ΔPIC)とバイパス弁で、ヘッダ間の差圧が200[kPa]になるよう制御します(図3)。空調負荷が小さいときはバイパス弁が開くので、冷水1次ポンプには常に一定流量が確保されます。
図3 1次ポンプシステム
②2次ポンプシステム
多くの大規模ビルに採用される2次ポンプシステムの場合は、冷水還ヘッダに建物の高さ分の水頭圧がかかっているので、冷水2次往ヘッダに取付けられた圧力調節器(PIC)と、冷水2次往ヘッダと冷水1次往ヘッダ間にあるバイパス弁で、冷水2次往ヘッダの圧力が水頭圧+200[kPa]になるよう制御します。ポンプの台数制御とインバータによるポンプの回転数制御を組合せることで、省エネルギーを実現した制御もありますが、それについては以前の号で紹介しましたので詳細は割愛します(図4)。
図4 2次ポンプシステム
4.開放式配管システムの圧力制御
開放式配管システムの場合、運転中の冷水還ヘッダの圧力は、圧力調節器(PIC-1)と圧力保持弁によって建物の高さ分の水頭圧に保たれています。この場合も冷水往ヘッダと冷水還ヘッダの圧力差を200[kPa]にすれば、システム全体の配管内に水が流れるので、冷水往ヘッダ圧力調節器(PIC-2)とバイパス弁で冷水往ヘッダの圧力を、冷水還ヘッダ圧力+200[kPa]になるように制御します(図5)。
前述の密閉式配管システムの2次ポンプ方式と同様に、ポンプの台数制御とインバータによるポンプの回転数制御を組合せることで、2次ポンプの省エネルギー運転が図れます。
なお、冷水還配管にある仕切弁は、2次ポンプ運転中は全開、2次ポンプ停止中は全閉にして、2次ポンプ停止中の水の落水を防止しています。
図5 開放式配管システム
【コラム】ダイレクトリターンとリバースリターン
図6(a)のような配管システムをダイレクトリターン方式といいます。ダイレクトリターン方式は、ポンプに近い下層階の負荷に水が流れやすく、ポンプから遠い上層部の負荷に水が流れにくくなる傾向にあります。各階層ごとの流量バランスがとれないときは、階層ごとの仕切弁を手動で調整して流量バランスをとります。
図6(b)のような配管システムをリバースリターン方式といいます。還り配管が1本増えますが、各階層ごとの配管の長さが同じになり流量バランスがとれ、それぞれの負荷に同じ量の水が流れるようになります。また、膨張タンクを還り管の頂点に設置するので、配管内のエアーを効果的に抜くことができます。ファンコイルユニットによる個室空調が多いホテルや病院で、リバースリターン方式の配管システムが多く採用されています。
図6 ダイレクトリターンとリバースリターン配管システム