第4回 データセンターの省エネとセキュリティ

(株)エムジー 顧問 富田 俊郎

はじめに

データセンターは商業ビルとは異なり、産業レベルの高信頼稼働と管理が求められます。近年のIoTやAI処理に伴う急激な通信量増加とクラウドシステムの急拡大により膨大なデータを高速で処理する要求に加えて、オンプレミス(各社が個別に所有し稼働)のサーバから高信頼で高いセキュリティ対策で守られているクラウドサーバへの移行が主流となり、経済産業省もクラウド化を推進しています。データセンターは現在第三期の建設ラッシュとなっています。

図1 データセンターの例
図1 データセンターの例
図2 日本のデータセンターサービス市場規模
図2 日本のデータセンターサービス市場規模

生成AIの急成長がデータセンターの消費電力を急増

最近話題のChatGPTですが、生成AIの急拡大がデータセンターの消費電力に大きく影響を与えています。AIの機械学習と推論に使用されるGPU(*1)とHBMメモリ(*2)はそのパラメータの規模が兆を超えるため、パラメータの増加に伴って図3に示すように消費電力が急増することが予測されています。したがってAI時代のデータセンターには更なる省エネが必要とされています。

図3 生成AIのデータセンター消費電力への影響
図3 生成AIのデータセンター消費電力への影響


(*1)GPU(Graphics Processing Unit)
グラフィックス処理や機械学習などの並列処理に特化し、大量のデータを高速に処理します。
(*2)HBMメモリ(High Bandwidth Memory)
非常に高い帯域幅(データ転送速度)を持ったDRAM。

データセンターの消費電力は空調システムが5割を占める

データセンター内のIT機器の消費電力は図4に示すように約4割にもかかわらず空調システムが約5割の消費電力を占めているのが特徴です。データセンターの空調は、サーバラックからの熱を効率的に冷却するために床経由で冷風をラックに送り冷却し、サーバラックからの熱をサーバ室上部を経由して空調機に送り排熱するデータセンター用の空調となっています。

図4 データセンターの消費電力内訳
図4 データセンターの消費電力内訳
図5 データセンター空調システムの例
図5 データセンター空調システムの例

データセンターのセキュリティの特徴

データセンターには漏洩が許されない情報が凝縮されているので、ネットワーク経由で侵入するサイバーセキュリティに加えて物理的侵入を防ぐ対策も求められます。具体的には許可されていないサーバルームへの侵入者に対する管理、監視カメラの設置、24時間365日の警備などがあります。さらに内部者犯行が外部侵入と同レベルで発生していることから内部関係者に対するセキュリティ対策を考慮する必要があります。ガイドラインとしては日本データセンター協会(JDCC)発行の「データセンター セキュリティ ガイドブック」があります。

図6 データセンターのセキュリティ対策構成の例
図6 データセンターのセキュリティ対策構成の例

【コラム】データセンター固有の省エネとセキュリティ

1. データセンターは商業ビルより高度の省エネ要求実現が必須

2. データセンターインフラ(DCIM)は高信頼連続稼働が要求される

3. デマンドレスポンスの電力需給調整がカギとなる

4. セキュリティはサイバー、物理、内部犯行の対策が必須

5. 設備機器はFA機器レベルの高信頼機器で構成される