プロセス制御において、操作量は1つで互いに影響を与える1組の制御量をもつ制御系を構成する、複合ループによる制御方式があります。今回は、その代表的な例としてカスケード制御について説明します。
カスケード(cascade)とは「小滝」や「階段状に連なる滝」を意味します。カスケード制御では、1次制御系の下流側に2次制御系が連なるイメージがあるのでそのように呼ばれます。

カスケード制御のループ構成

カスケード制御では、1次制御系の調節計(プライマリコントローラ)の出力信号で2次制御系の調節計(セカンダリコントローラ)の目標値を変化させます。図1.1は、温度制御系と流量制御系のカスケード制御のループ構成例です。このループ構成における制御目標値はプライマリコントローラに与える温度設定値であり、プロセスに対する唯一の操作量は燃料流量調節弁を駆動するセカンダリコントローラの出力信号です。

図1.1 カスケード制御のループ構成例
図1.1 カスケード制御のループ構成例

比較のために、同じ温度制御系を単一ループで構成した場合の例を図1.2に示します。

図1.2 温度制御の単一ループ構成
図1.2 温度制御の単一ループ構成

カスケード制御のメリット

図2(a)(b)にカスケード制御のブロック線図を示します。図2(b)からわかるように、カスケード制御では2次制御系が1次制御系の中で閉回路を成すことになり、1次系プロセスの一部とみなせます。このことにより、カスケード制御では下記のようなメリットが生まれます。

図2(a)、(b) カスケード制御のブロック線図
図2(a)、(b) カスケード制御のブロック線図

(1)2次系プロセスの中に発生した外乱は、1次制御系に影響を与える前に2次制御系により修正される。

(2)2次系プロセスの中に存在する位相遅れは2次制御系により改善されるので、結果的に1次制御系の応答速度が早まる。

(3)2次制御系中に存在するプロセスゲインの変動や非直線性は2次制御系の中で吸収される。

(4)2次制御系は1次制御系のプライマリコントローラによって、質量あるいはエネルギーの流れを正確に操作する。

前出の図1.1の例では、プライマリコントローラの目標値は加熱炉の温度であり、出力信号でセカンダリコントローラの設定値を操作して燃料流量を制御します。ここで外乱となるのは燃料ラインの圧力変動であり、もし燃料調節弁の開度が一定であっても調節弁の入口圧力が変動すれば(たとえば、1台の燃料供給ポンプで複数の炉に燃料を供給している場合など、ほかの炉の運転状況によって燃料供給ラインの圧力変動が起きます)燃料の流量が変動し、これが巡って炉内温度に変動をもたらします。
この外乱に対しては、2次制御系の働きによって流量が一定に保たれるため、1次制御系への影響を最小限に抑えることができます。もし、カスケード制御のループ構成を採らないで1次制御系から直接燃料調節弁を操作していれば、温度変動が起きるまで調節弁開度が変わらないため応答が遅れ、温度変動が大きくなります(図3参照)。

図3 カスケード制御の効果
図3 カスケード制御の効果

一般に2次制御系の固有周期(*1)は1次制御系のそれの1/3以下が望ましいとされており、本例では1次制御系の温度プロセスに対して2次系の流量プロセスは条件を満たしているといえます。
また、流量プロセスの中にはポンプの流量・圧力特性や調節弁のCv値(*2)特性、ヒステリシスなどによるゲインの変化や非直線性が含まれますが、それも2次制御系の働きにより吸収されます。

カスケード制御の例

前述した加熱炉の温度制御のほかにも様々なカスケード制御の例があります。図4はボイラの蒸発缶(ドラム)のレベル制御であり、1次制御系のドラムレベルから2次制御系の給水流量に対するカスケード制御のループ構成になっています。ボイラ負荷の変動などの外乱に対し、ドラムレベルが一定に保たれるように給水流量が早い応答で正確に操作されます(*3)

図4 ボイラドラムレベル制御
図4 ボイラドラムレベル制御

また、図5は反応槽の温度制御の例であり、1次制御系の反応槽の内部温度から2次制御系のジャケット(反応槽を取り巻く熱交換装置)温度に対するカスケード制御のループ構成になっています。外乱となるのは、ジャケットに供給する冷水や温水の温度変動や流量変動であり、それが1次制御系に影響を与えないように2次制御系で抑えます。この例では温度制御系から温度制御系へのカスケード構成になり、それぞれの制御系の固有周期の差がないため、カスケード制御の効果を上げるためにセカンダリコントローラを比例制御にしてループゲインを上げ、応答速度をなるべく早くするなどの工夫が必要です。

図5 反応槽の温度制御
図5 反応槽の温度制御

調節計とは形も用途も異なりますが、調節弁のポジショナもカスケード制御における2次制御系と見なすことができます。調節弁用のポジショナは、弁駆動部のまわりにフィードバックの閉回路を構成して調節弁の特性を改善するために用いられます(図6参照)。ポジショナは実際の弁開度を機械的、あるいは電気的に検出し、それが入力(開度指令信号)と一致するように空気圧ダイヤフラムやシリンダなどの弁駆動部を制御します。

図6 ポジショナ付き調節弁の構造
図6 ポジショナ付き調節弁の構造

つまり、調節弁用のポジショナは本質的に高ゲインの比例調節計であるといえ、PID調節計とポジショナを搭載した調節弁とを使って制御ループを構成した場合、プライマリコントローラはPID調節計、セカンダリコントローラはポジショナによるカスケード制御のループが構成されていることになります。

(*1) フィードバック制御ループでは必ず振動が発生し、その周期(固有周期)はプロセスや調節計を含めたループ一巡の動特性により決まります。固有周期は、ループの応答速度に反比例し、固有周期が短ければループの応答速度は速くなり、長ければ遅くなります。
(*2) Cv値とは調節弁の容量を示す数値(容量係数:Valve Coefficient)であり、弁の開度および前後の差圧を一定に保ったときにどれだけの水が流れるかで表します。
(*3) 実際のプロセスでは、ドラムレベル、給水流量に主蒸気流量を加えた「3要素制御」が適用されます。

(株)エムジー 広報部