SDGsとGXよもやま話 第6回 電気自動車(EV)のSDGsとGA(グリーナーオートメーション)
(株)エムジー 顧問 富田 俊郎
はじめに
電気自動車(EV)は、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた重要な要素であり、とくにSDGsの目標17項目の中で以下の目標7、11、13に関連しています(*1)。
中でも目標13の「気候変動に具体的な対策を」に関連した地球温暖化対策としてヨーロッパ主導で進められた自動車のEV化は、当初の期待と異なり、EVの普及拡大とともに技術的に克服すべき問題点が明らかになるにつれて、普及の進展が足踏み状態となっています。中でもEVのキーコンポーネントである「バッテリー」は貴重資源の不足、バッテリーの充電容量不足、充電時間の短縮化、保守および火災安全性の点から自動車自体の信頼レベルに影響する問題の発生が続いています。
(*1) | 目標7 :エネルギーをみんなに そしてクリーンに 目標11 :住み続けられるまちづくりを 目標13 :気候変動に具体的な対策を |
CO2排出源の16%は自動車分野
地球温暖化に及ぼす影響が最も大きいといわれる温室効果ガスですが、2015年にパリ協定が採択されたことにともない、日本政府は「2050年カーボンニュートラル宣言」を発表しGX(グリーントランスフォーメーション)を推進しています。各産業において、CO2をはじめとする温室効果ガスの削減が急務となっています。図1は国内のCO2排出量、図2は自動車のCO2排出量比率の大きさを示しています。
2019年度における日本のCO2排出量(11億800万トン)の内訳を見ると、運輸部門からの排出量が18.6%を占めています。さらに自動車分野からの排出量が16%を占めており、自動車産業の環境対策が見直されている要因の一つとなっています。


EVとガソリン自動車のエコ比較
EVは走行中に電気の力のみで走行するためCO2などの排気ガスを一切排出しないことから、ガソリン車よりエコな車で環境に優しい車として認識されてきました。
しかしCO2の発生量をそれぞれLCA(ライフサイクルアセスメント)と走行距離からみるとCO2排出量の推移は必ずしもEVが常に有利とはならないことを示しています。
EVとガソリン車のライフサイクルCO2排出量を図3に示します。自動車のエコはライフサイクルで評価する必要性を示しています。
- EVの製造時のCO2排出量はガソリン車より多い。
- 走行距離が111,511kmまでのEVのCO2排出量はガソリン車より多い。
- EVのCO2排出量がガソリン車より少ないのは111,511km~160,000kmの間。
- EVはバッテリー交換後、廃車までCO2排出量はガソリン車より多い。

図3 EVとガソリン車のライフサイクルCO2排出量
バッテリーの製造時に6.2tのCO2を排出(62kWhバッテリーの例)
さらに、EVは環境性能に優れた車ですが、実際には製造時にCO2が発生し、その最大の原因がバッテリーです。
バッテリー製造時のCO2発生量は、仮にEVに搭載されている62kWhのバッテリーを1個製造する場合、国際エネルギー機関(IEA)の研究によればCO2発生量は6.2tに上ると試算されています。これは、約3人が1年間に排出するCO2量に相当します。新品バッテリーの製造にはこれだけのCO2が発生します。
図4はEVの概略のバッテリー製造工程を示しています。
- リチウム、コバルト、ニッケルなどの原材料を採掘する原材料の採掘
- 採掘された原材料は精製され、高純度の化学物質に変換する材料の精製
- 精製された材料を使用して、正極と負極を構成する電極の製造
- 電極を組合せてバッテリーセルを作るセルの組立て
- 複数のセルを組合せてバッテリーモジュールを作るモジュールとパックの組立て

図4 リチウムイオン電池の製造工程
バッテリーの再利用でGA(グリーナーオートメーション)化
EVのバッテリー製造にはエネルギーと資源が必要ですが、リサイクル技術の進展により、使用済みバッテリーの再利用が進んでいます。これにより、資源の有効活用と環境負荷の軽減が図られています。
- バッテリー製造時のCO2発生量を削減すること
- 希少資源のレアメタルを有効活用すること
図5に再利用のフローの例を示します。
この段階でもエネルギー消費があり、CO2が排出されます。リサイクル技術の進展は、使用済みバッテリーの再利用もグリーナーオートメーション分野の一つとなっています。

図5 再利用のフロー例
【コラム】製造、組立、検査等生産ラインごとのGA(グリーナーオートメーション)化
- バッテリー製造装置のライン装置レベルの省エネ化
- 生産ラインの省エネ実現にライン毎の消費電力の見える化
- バッテリー再利用の推進
(再生バッテリーの使用、産業用蓄電池、家庭用蓄電池など)