SDGsとGXよもやま話 第8回(最終回) 生成AIと製造エージェントでGA(グリーナーオートメーション)(*1)への貢献
(株)エムジー 顧問 富田 俊郎
はじめに
生成AIは対話型応答、静止画、動画像生成、プログラム生成など、膨大な蓄積情報と学習により、有用な結果が得られる水準に達しています。製造業では、先人の知識、経験による技術を学習し、自律的に作業を実行する製造エージェント(*2)が製造技術者不足の解消に期待されています。頭脳としての生成AIとノウハウをもつ手足としての製造エージェントロボット(略:製造AIロボット)の連携がGA(グリーナーオートメーション)実現のカギとなります。
従来の自動化技術を超える製造業におけるGA(グリーナーオートメーション)
GA(グリーナーオートメーション:より環境に配慮した自動化)は、製造業において、持続可能性と環境保護を重視した自動化技術の活用を指し、とくに生成AIと製造AIロボットが、生産性改革を実現するものと期待されています。グリーナーオートメーションに生成AIを導入して、従来の自動化技術と併用することにより、図1に示すような分野での効果が期待されます。なかでもエネルギー消費量の削減と製造エージェントによる製造の自動化は省エネと生産性向上に貢献することが期待されています。

図1 製造業のGA(グリーナーオートメーション)分野
省エネルギー分野での生成AIの活用
従来より製造業での省エネは図2に示すように実績がありますが、膨大な蓄積データとAIによる解析により、高度の省エネ実現が可能となります。
- 自動化システムの最適化
- 高効率な機器の導入(例:省エネモータ、軽量素材)
- 生産プロセスの見直しによるむだの排除
- 自動化システムの電源に太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー活用
- 工場全体のエネルギー管理システム導入による再生可能エネルギー利用の最大化

図2 日本の最終エネルギー消費の推移
省エネルギーの高度化とAIの導入
制御AIは、個別の制御機器あるいは1つのフロア領域のみではなく、建物全体にわたる大量のデータを学習し、そのパターンや特徴を学習して次の事象を予測します。単純な制御ループのフィードバック制御ではなく、ビル全体の事象を予測制御することにより、高度な制御を実現しています。制御AIは、機械学習による、入力と出力のモデルを柔軟に作り出すことができ、多層のニューラルネットワークによりビルの総合エネルギー使用状態を学習し、AIによる改善のパターンから推定される予測先行制御を実現しています。図3ではHVAC(*3)への適用例を示しています。

図3 制御AIの予測制御を省エネに適用
製造プロセスの自動化としての製造AIロボット
日本は製造用ロボットの先進国であり、世界中の工場でロボット生産、組立、検査により生産要員不足の解消に貢献しています。
現在は固定ではなく変化する環境や動作条件下でも判断して動作できる人の作業を代替する製造AIロボットが、人手不足を解消するものと期待されています。
- 過去のデータやシミュレーション結果をもとに、最適な製造プロセスを学習し、資源のむだを減らしたり、品質を向上させたりする。
- 自動化により、危険な作業から従業員を解放し、安全性を向上させる。
製造AI ロボットの特徴
今までの自動化装置は処理手順規定のプログラムが組込まれ、処理シーケンスに従って動作するものでしたが、これは現在も主流であり今後も製造における貢献度は大きいと思われます。工業製造用ロボットの分野では日本はすでに先進国であり、多数の分野に製造ロボットが導入されています。次のステップとしては、機能固定型自動製造装置から人の作業を代替できる人型ロボットが大規模に応用される分野になるとみられています。工業用人型ロボットは人手不足解消の切り札として、とくに製造業で大規模生産されるようになる可能性があります。

図4 製造AIロボットの例
【コラム】GA(グリーナーオートメーション)によるスマートファクトリー
- 生成AI導入でより高度の省エネ実現
- 製造エージェントに移植よる製造プロセスの革新で生産性の向上
- 製造AIロボット導入で製造技術者不足の解消
(*1)GA(グリーナーオートメーション:より環境に配慮した自動化)は、持続可能性と環境保護を重視した自動化技術の活用を指します。
(*2)エージェント:自律的に行動し、特定の目標を達成するAI
(*3)Heating Ventilation and Air Conditioning:空調制御システム
謝辞
「SDGsとGXよもやま話」として、第1回から第8回まで関心を寄せていただきありがとうございました。