プロセス制御では、操作量は1つで互いに影響を与える1組の制御量をもつ制御系を構成する、複合ループによる制御方式があります。今回は、その中から比率制御系と選択制御系について説明します。

比率制御系

比率制御系とは、2つ以上の変量間の比率を制御することを意味します。代表的な例として、ボイラのバーナーに供給する燃料流量と空気流量の比率制御(空燃比制御)や水処理プロセスにおける水流量と滅菌用薬液流量の比率制御(薬注制御)などがあります。

比率制御のループ構成

比率制御の目標値、すなわち制御量は、2つの変量間の比率になります。図1に比率制御の基本的な概念を示します。ここでは、一方の変量は無調節、いわば野放し状態で、それに対して一方の変量を操作し比率を制御しています。
ころが、この制御方式でもしQbを野放し状態にして分子側のQaに調節弁を入れて操作すると(図1の点線)、流量制御ループ内に除算器が入り分母側のQbが変化するのでループゲインが変わり、制御が不安定になる可能性があります。逆にQb側に調節弁を入れて操作すると(図1の実線)、今度は調節計出力の値によってループゲインが変わるので系が非線形となり、同様に制御が不安定になる可能性があります。

図1 比率制御の基本的な概念
図1 比率制御の基本的な概念

これらの問題は、制御ループの閉回路内に除算器が入っていることが原因であるため、これを外に出すことにより解決します。そこで、実際の比率制御では図2に示すようなループ構成を採用します。ここでは、一方の流量Qaに対して手動で設定した比率kを乗じてQbを算出し、それをもう一方の流量制御ループの設定値としています。つまり、図1のループ構成では直接の制御量が比率k(比率制御ループ)であるのに対し、図2では流量Qbが直接の制御量(流量制御ループ)になります。

図2 比率制御のループ構成(直列式)
図2 比率制御のループ構成(直列式)

選択制御系

安全性や効率などの理由で、2つあるいはそれ以上の変量が、それぞれある限界を超えてはならないという条件があるプロセスが少なからず存在します。そのようなプロセスにおいて、もし制御量の数が操作量の数より多い場合には、優先されるいずれか一つの制御量を、ある論理に従って選択して操作しなければなりません。そのような動作を行うのが選択制御系であり、次のような目的で採用されます。

  • 装置の保護
  • 最高点の選択
  • 計装の冗長化

以下に選択制御系の例をいくつか示します。

a)オーバーライド制御

図3は、ターボ圧縮機で装置の保護を目的として採用されたオーバーライド制御のループ構成例です。ここでは、ターボ圧縮機の吐出圧力が与えられた制限を超えない範囲内で吐出流量を調節しています。ターボ圧縮機の負荷が軽い(気体の需要が少ない)うちは圧力調節計が調節を受持ち、そのために流量は設定値を下回っています。負荷が重くなる(気体の需要が増える)と流量調節計がその設定限界流量を超えないように調節を引継ぎます。電動機の速度が減少するとターボ圧縮機の吐出流量と吐出圧力の両方が減少するので、本例ではローセレクタによって出力の小さい方の調節計が選択され電動機の速度が操作されます。なお、選択されていない調節計は開ループとなり制御偏差が生じるので、そのままでは積分動作によりリセットワインドアップ(*1)状態に陥ってしまいます。そのために、実際のループ構成では外部帰還機能をもつ調節計を採用し、選択されていない調節計がリセットワインドアップを起こさないようにする工夫がされています。

図3 オーバーライド制御のループ構成例(コンプレッサ)
図3 オーバーライド制御のループ構成例(コンプレッサ)

図4に本例でのオーバーライド制御における制御量の遷移状態を示します。ターボ圧縮機の負荷が重く流量が調節されている間は圧力が目標値以下で変動しており、逆に負荷が軽く吐出圧力が設定値まで上昇した時には流量が減少する様子を示しています。

図4 オーバーライド制御の状態遷移
図4 オーバーライド制御の状態遷移

b)最高値選択制御

最高値選択制御とは一群の測定値の中から、最高値を選択して調節を行う制御方式です。その例として、固定床反応器(*2)の最高温度制御を図5に示します。

固定床反応器内の最高温度の場所は、供給流量の変動や内部の触媒の劣化などにより移動する可能性があります。そこで、反応器内の要所要所で温度を測定して比較し、その中からハイセレクタにより最高値を選んで調節計の測定値として使います。

図5 最高値選択制御ループ構成例
図5 最高値選択制御ループ構成例

c)計器の冗長化構成

計器の故障によりプラントや装置が危険状態に陥ることを避けるために、重要な計器を複数台設置(冗長化)することがあります。
図6は分析計を2台設置した例です。いずれかの分析計の出力をハイセレクタで選択し、調節計の測定値として使います。分析計の故障などにより、いずれかの分析計の出力が下がった場合でも調節を続行できるようにした制御系です。もし、分析計が誤作動して指示が上昇した場合、原料が遮断されて装置が停止する方向へ制御されますが、それは安全方向(フェールセーフ)なので許容されるものとします。

図6 計器の冗長化ループ構成例
図6 計器の冗長化ループ構成例
(*1) PID調節計の積分動作では制御偏差の時間積分値が出力に加わるので、偏差のある状態が長時間続くと積分動作により出力が飽和します(プラス、またはマイナス方向)。これをリセットワインドアップ(積分飽和)とよびます。
(*2) 触媒を充填した容器内に原料を通過させ、化学反応により目的とする生成物を得るための装置の総称です。反応に必要な触媒が固定されているため、「固定床」とよばれます。

(株)エムジー 広報部