空気圧式調節弁と電動調節弁を実際の流量制御ループに取付けて、それぞれの制御結果を具体的に見ていただきます。
計装豆知識
バルブアクチュエータ 空気式と電動式の比較
印刷用PDF プロセスオートメーションにおける、制御ループの主要な操作対象として、各種流体の流れを制御するバルブの開閉が挙げられます。そして、この開閉操作を行うのがバルブアクチュエータ(弁体駆動部)であり、その方式としては、空気式、電気式、油圧式、ソレノイド式など様々なものがあります。その中で、入力信号に比例したバルブ開度を実現する調節弁に用いられるアクチュエータの方式は、主に空気式と電動式です。今月は、空気式バルブアクチュエータと電動式バルブアクチュエータを比較してみたいと思います。
空気式バルブアクチュエータ
リニアモーション(直線作動)タイプの空気式調節弁の一例を図1に示します。
空気式バルブアクチュエータの第一の特長は、構造が簡単なことです。また、容易に大きな出力(駆動力)を得ることができます。そして、ユーザーが行う保守作業が容易であるため、最も多く使用されています。一方、駆動源となる空気の圧縮性のため、精度や応答性に問題があります。また、駆動源である圧縮空気を発生させるために、空気圧縮機(エアコンプレッサ)だけでなく、エアフィルタやエアドライヤなどの周辺機器と調節弁までの空気配管が必要です。そして、これら空気設備の維持管理に手間と費用のかかることが空気式にとって不利な点です。

電動式バルブアクチュエータ
リニアモーションタイプの電動式バルブアクチュエータの例として、エム・システム技研製のサーボトップ II(形式:PSN1)を図2に示します。
電動式は、空気式と比較して構造が複雑であり、高価なため、かつてはそれほど普及していませんでした。しかし、普及するにしたがって次第に価格は低下し、同時に信頼性も向上してきました。その特長は、原理的に高精度(高分解能)であることと、駆動源として電気を用いるため、電気配線だけで工事が済み、空気式と比較して維持管理が容易かつ安価に済む点です。

空気式と電動式の比較
以上のほかに、空気式と電動式を比較する際にしばしば論じられるのが、停電時の挙動です。つまり、空気式の場合、停電時に安全側に調節弁を駆動することを条件にして使用できるという長所があります。しかし、停電時にそのときの弁開度を維持させたい場合もあります。そのような場合には、ロックアップバルブを併用する必要があります。
一方、電動式の場合、停電時には駆動源を失い、停電発生時点の弁開度をそのまま維持したい場合は問題ありませんが、安全な開度に移動して停止させたい場合には、問題があります。それを解決するため、ゼンマイとクラッチ機構によって安全側に駆動するものや、電池に蓄えられた電力によって安全な位置に駆動するものがあります。エム・システム技研のサーボトップ II(PSN1(図2)および PSN3)には、オプションとしてその機能を用意しています。
以上のとおり、現在では空気式バルブアクチュエータと電動式バルブアクチュエータの間には、技術的、経済的な差異はほとんどありません。すでに周囲に空気式アクチュエータが多数使用されている場合や本質安全防爆が必要な場合を除き、電動式バルブアクチュエータのご採用は、十分に検討に値します。
*サーボトップ は、エム・システム技研の登録商標です。
(株)エム・システム技研 開発部
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