計装豆知識
計器用変成器の接地について
印刷用PDF 経済産業省令の「電気設備に関する技術基準を定める省令(通称:電気設備技術基準)」注1)(以下、「電技」)の第4条では、以下のように定めています。
「電気設備は、感電、火災その他人体に危害を及ぼし、又は物件に損傷を与えるおそれがないように施設しなければならない」
今回は、計器用変成器注2)(とくに非接地形の計器用変圧器と変流器(一般的呼称VT、CT)に限定)における接地に関連する必要条件についてご紹介します。
計器用変成器の二次側電路接地について
一次側を高圧に接続する高圧計器用変成器もしくは特別高圧に接続する特別高圧計器用変成器においては、一部の例外を除いて、その二次側電路に接地工事を施す必要があります。
高圧電路や特別高圧電路と低圧電路との混触などの異常発生時に感電や火災など人や家畜に危害が及ばないようにするため、また計器の保護のために、電技の第12条に接地工事について定められています。
接地の種類については、原子力安全・保安院による「電気設備の技術基準の解釈」(以下、「解釈」)の第27条では、高圧計器用変成器の二次側電路にはD種接地工事を、また特別高圧計器用変成器の二次側電路にはA種接地工事を施すことが要件として示されています。
一次側を低圧に接続する低圧計器用変成器については、その二次側の接地工事は一般に不要です。なお、これに該当しない場合もあるため、詳しくは解釈の第13条をご参照ください。
一般的な受電設備での計器用変成器の一次側電路は高圧の場合が多いため、エム・システム技研の電力トランスデューサや電力マルチメータなどの仕様書においては、二次側電路を接地する表記を採用しています。
なお、低圧、高圧および特別高圧の区分注3)を表1に示します。
表1 電圧区分
電圧区分 | |
---|---|
低 圧 | 直流は750V以下の電圧、交流は600V以下の電圧 |
高 圧 | 直流は750Vを、交流は600Vを超えて7000V以下の電圧 |
特別高圧 | 直流、交流ともに7000Vを超える電圧 |
計器用変成器の鉄台および外箱の接地について
絶縁の劣化などのため外箱や鉄心が充電された場合に、それらに人が触れると感電します。
そのような感電を防止するために、計器用変成器の鉄台や金属製外箱(それらのない場合は鉄心)には、機器器具の区分に応じた接地工事注4)を施すことが、要件として解釈の第29条に示されています(表2参照)。
ただし、外箱のない計器用変成器がゴム、合成樹脂その他の絶縁物で被覆されたものである場合など、この要求事項を適用しなくてよい場合もあります。
表2 機械器具の区分
機械器具の区分 | 接地工事 |
---|---|
300V以下の低圧用のもの | D種接地工事 |
300Vを超える低圧用のもの | C種接地工事 |
高圧用または特別高圧用のもの | A種接地工事 |
〈参考文献〉
・「電気設備の技術基準とその解釈」、社団法人日本電気協会、オーム社(2008/5/30)
・JIS C 1731-1 計器用変成器−(標準用及び一般計測用)第1部:変流器
注1)電技(電気設備技術基準)は、電子政府の総合窓口「e-Gov(イーガブ)」(https://www.e-gov.go.jp/)にて参照できます。
注2)計器用変成器とは、「電気計器又は測定装置と共に使用する電流及び電圧の変成用機器で、変流器及び計器用変圧器の総称(JIS C 1731-1、2 の用語定義)」です。また、『エムエスツデー』誌2008年7月号および8月号の「計装豆知識」に掲載の「CT(Current Transformer)について」の記事も関連していますので、併せてご参照ください。
注3)電圧区分については電技の第2条に規定されています。
注4)接地工事にはA種、B種、C種、D種の種類があり、解釈の第19条に具体的な接地抵抗値が示されています。なお、『エムエスツデー』誌2001年6月号の「計装豆知識」(接地について)も併せてご参照ください。
(株)エム・システム技研 設計部
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