計装豆知識
CT(Current Transformer)について(1)
印刷用PDF 近年、省エネへの関心が高まり、電力監視システムを構築することが多くなっています。その際必要になるCT(Current Transformer)の原理と概要を、今月から2回にわたってご紹介します。
1.CTとは
CTは変流器、VT(Voltage Transformer)は計器用変圧器のことで、共に計器用変成器に分類され、JISでは以下のように定義されています。
・計器用変成器:電気計器又は測定装置と共に使用する電流及び電圧の変成用機器で、変流器及び計器用変圧器の総称
・変流器:一次電流をこれに比例する二次電流に変成する計器用変成器
・計器用変圧器:一次電圧をこれに比例する二次電圧に変成する計器用変成器
2.基本原理
図1に示すように、変成器は磁界の変化を介して信号や電力を伝達します。

通常、CTの二次側は、低インピーダンス(VTの二次側は高インピーダンス)で使用します。
一次側に交流電流を流すと鉄心中に変化する磁束が発生し、この磁束の変化に対応して二次側に交流電流が流れます。
一次側、二次側の電流(i)と巻数(N)には式(1)に示す関係が成り立ちます(理想的なCTの場合)。
巻数比 N2/N1=nとおき、式(1)を変形して i2を求めると、式(2)で示すように、一次側の電流を巻数比で割った値が二次側に流れる電流になります。

CTは、この原理を利用して、一次側の電流を二次側で計測しやすい電流に変換しています。
CTの場合、もし二次側を開放の状態で一次電流を流すと、二次電流を流そうとして開放端に高電圧が発生し、絶縁破壊、焼損事故につながる恐れがあるので注意が必要です。
エム・システム技研のプラグインタイプのCT変換器には、二次側開放防止のためのCTプロテクタを取り付けているため、変換器をソケットからはずしても二次側開放にならず事故を防ぐことができます(図2)。
3.定格電流について
CTを用いて、一次電流を二次電流に変換し計測を行いますが、定格一次電流および定格二次電流は、JIS C1731-1により表1のとおり定められています。
表1 変流器の定格電流
定格一次電流〔A〕 | 定格二次電流〔A〕 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
− | 1 | 10 | 100 | 1000 | 10000 | 1 5 |
− | − | 12 | 120 | 1200 | 12000 | |
− | − | 15 | 150 | 1500 | 15000 | |
− | 2 | 20 | 200 | 2000 | 20000 | |
0.25 | 2.5 | 25 | 250 | 2500 | − | |
− | 3 | 30 | 300 | 3000 | 30000 | |
− | 4 | 40 | 400 | 4000 | − | |
0.5 | 5 | 50 | 500 | 5000 | − | |
− | 6 | 60 | 600 | 6000 | − | |
− | − | 75 | 750 | − | − | |
− | 8 | 80 | 800 | 8000 | − |
次回はCTの精度やクランプ式交流電流センサについてご説明します。
〈参考文献〉
JIS C 1731-1 計器用変成器−(標準及び一般計測用)第1部:変流器
(株)エム・システム技研 開発部
CT(Current Transformer)について(2)
印刷用PDF先月に引き続き、CT(Current Transformer)についてご説明します。
1.精度について
CTの特性を示す重要なファクターとして「変流比誤差(比誤差)」と「位相角」があり、JIS C 1731-1で以下のように定義されています。
・変流比誤差(比誤差):真の変流比が公称変流比に等しくないことから生じる誤差のことで、次の式で表される。
・位相角:一次電流ベクトルと二次電流ベクトルとの間の位相差。ベクトルの方向は理想的な変流器の位相角を零とする方向に選び、二次電流ベクトルが進む場合の位相角を正とし、分注)で表す。
真の変流比とは、実際に一次巻線に通電した電流と、二次巻線から供給される電流との比であり、その値は実際に測定して求めます。公称電流比とは、定格一次電流と定格二次電流との比のことです。
JISでは、各確度階級によって表1、表2に示すように比誤差と位相角の限度が定められており、中間の一次電流の比誤差および位相角の限度は、補間法によって定めることになっています。
表1 標準用変流器の比誤差及び位相角の限度
確度階級 | 比誤差〔%〕 | 位相角〔分〕 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
0.025 In | 0.05 In | 0.2 In | 1.0 In | 1.2 In | 0.025 In | 0.05 In | 0.2 In | 1.0 In | 1.2 In | |
0.1級 | ±0.2 | ±0.16 | ±0.12 | ±0.1 | ±0.1 | ±10 | ±8 | ±6 | ±5 | ±5 |
0.2級 | ±0.6 | ±0.5 | ±0.3 | ±0.2 | ±0.2 | ±30 | ±25 | ±15 | ±10 | ±10 |
備考 In は、定格周波数の定格一次電流を表す
表2 一般計測用変流器の比誤差及び位相角の限度
確度階級 | 比誤差〔%〕 | 位相角〔分〕 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
0.05 In | 0.2 In | 1.0 In | 0.05 In | 0.2 In | 1.0 In | |
0.5級 | ±1.5 | ±0.75 | ±0.5 | ±90 | ±45 | ±30 |
1.0級 | ±3.0 | ±1.5 | ±1.0 | ±180 | ±90 | ±60 |
3.0級 | 0.5 In ~ 1.0 In ±3.0 | 0.5 In ~ 1.0 In ±180 |
備考 In は、定格周波数の定格一次電流を表す
2.クランプ式交流電流センサ
近年、電力監視システムの構築に、クランプ式交流電流センサを用いる例が多くなっています。クランプ式交流電流センサを用いれば、既存の設備に設置する場合に、再配線作業が不要になり(図1参照)、通常のCTを用いる場合に比較して作業工程を大幅に減らすことができます。

クランプ式交流電流センサは、計測・制御用としての使用容易性と高信頼性を追求したCTです。クランプ式交流電流センサの二次電流は、JISで定められた定格ではなく、高変流比でmAレベルの出力電流を生ずる製品が多く、エネルギー計測ユニットなどで多数用いられています。
エム・システム技研では、通常のCTを用いた信号変換器(形式:LTCE、LTWT)やリモートI/O(形式:R3-CT4、R3-WT4)のご提供はもちろんのこと、クランプ式交流電流センサを用いた信号変換器(形式:M6SCTC)やリモートI/O(形式:R3-CT8A、R3-WTU)もご提供しています。また、エム・システム技研のクランプ式交流電流センサ(図1)は、二次側開放時に高電圧が発生しないように保護用素子(過電圧クランプ素子)を内蔵しているため、安心してご使用いただけます。
〈参考文献〉
JIS C 1731-1 計器用変成器−(標準用及び一般計測用)第1部:変流器
注)分は、1度の1/60を表す単位
(株)エム・システム技研 開発部
ご注意:当サイト「計装豆知識」は掲載誌発行当時の記事をそのまま再編集しておりますので、内容の一部(規格、価格、製品仕様など)が、その後変更されている場合があります。最新の情報や掲載記事に関するご質問はホットラインまでお問合せください。