計装豆知識
フィードフォワード制御
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フィードバック制御は、基本的な制御方式として各種のプロセスや装置に広く利用されていますが、本質的な弱点も抱えています。フィードフォワード制御はその弱点を補う制御方式として、フィードバック制御との組合せで、あるいは単独で用いられます。今回はフィードフォワード制御の基本的な動作と応用例について説明します。
フィードフォワード制御の考え方
フィードバック制御の本質は目標値と制御量の偏差に対する修正動作であり、コントローラは偏差が存在する限り試行錯誤的に制御出力を変えていきます。その結果、フィードバック制御のループには必ず振動応答が発生します。この振動周期を固有周期といい、固有周期の約3倍より短い間隔で入る外乱に対しては制御の効果が期待できません。
そこで、もし偏差を発生させる原因となる外乱要素が測定でき、その影響をあらかじめ打ち消すことができれば、偏差を発生させることなく制御系を安定に保つことができます。このような考え方に基づいた制御方式をフィードフォワード制御とよびます。
フィードフォワード制御の基本的な動作を図1.1に示す熱交換器の温度制御の例をとって説明します。制御目標は熱交換器出口の流体温度(To)を一定に保つことであり、操作量は蒸気流量(Ws)です。そして、外乱となるのは流体の流量(Qp)の変動(負荷変動)であり、Qpが増加すればToが下がり、減少すればToが上がる方向で影響を与えます。なお、ここでは熱交換器入り口における流体温度Tiは一定であるものとします。

図1.1 熱交換器の温度制御(フィードバック制御)
フィードバック制御では、負荷変動によりQpが変化するとToに偏差が発生するので、PID動作によりWsが操作されてToが引き戻される動作を繰り返します。その結果、制御系が落ち着くまでToは振動的に変化します(図1.2参照)。

図1.2 負荷変動に対する応答(フィードバック制御)
一方、図2.1はフィードフォワード制御の適用例です。外乱となるQpを測定し、値が変化するとフィードフォワード制御がその影響を打ち消す分だけWsを操作します。本例のプロセスでは熱平衡の関係から、変数間に次式が成り立ちます。

図2.1 フィードフォワード制御

Hs:蒸気の潜熱、Cp:流体の比熱
(1)式から必要な蒸気量は下式で求められます。

フィードフォワード制御は(2)式にしたがって蒸気量を操作するので、外乱に対してToの変動を抑えることができます(図2.2参照)。

図2.2 負荷変動に対する応答(フィードフォワード制御)
フィードバック制御とフィードフォワード制御の組合せ
フィードフォワード制御では、制御アルゴリズム(フィードフォワード要素)がプロセス特性に完全に一致していれば理論的に制御偏差が生じることはありませんが、実際のプロセス特性は複雑なので実現は困難です。したがって、フィードフォワード制御が単独で用いられることは少なく、多くはフィードバック制御との組合せにより用いられます。図3は前述の熱交換器の温度制御において、フィードバック制御とフィードフォワード制御を組合せたループ構成の例です。ここでは、フィードバック制御の温度コントローラの操作出力にフィードフォワード制御の出力が加算されています。この構成により、フィードフォワード制御による誤差をフィードバック制御が修正するように働きます。また、フィードフォワード制御のアルゴリズムには、前述した(2)式に基づくゲインに動特性要素が加わっていますが、これについては次項で説明します。

図3 フィードバック制御とフィードフォワード制御の組合せ
フィードフォワード制御のアルゴリズム(フィードフォワード要素)
図3のループ構成をブロック線図で表すと図4のようになります。ここで、プロセス特性Gp(s)(*1)と外乱の特性Gd(s)はあらかじめわかっているものとすれば、外乱DがToに影響を与えないためには次の関係が成り立てば良いことになります。

図4 熱交換器の温度制御ブロック線図
上式から、フィードフォワード制御のアルゴリズム(フィードフォワード要素)は下式で得られます。

ここで、プロセス特性と外乱特性を一次遅れとむだ時間により表せば下式のようになります。

Kp : プロセスのゲイン、Tp : プロセスの時定数、Lp : プロセスのむだ時間

Kd : 外乱のゲイン、Td : 外乱の時定数、Ld : 外乱のむだ時間
(5)、(6)式を(4)式に代入するとフィードフォワード要素Gf(s)は次のようになります。

(7)式における進み遅れ演算項、およびむだ時間演算項がフィードフォワード要素の動特性要素に相当します。
ただし、注意が必要なのは、(7)式においてLd<Lpとなる場合です。このような演算は実現できない(時間を遡ることはできない)ので、そもそもフィードフォワード制御の適用は好ましくないということになります。
フィードフォワード制御の応用例
フィードフォワード制御の代表的な応用例として、ボイラの給水制御をご紹介します。
水管ボイラ(*2)においては、ドラムの水位を一定に保つ必要があり、給水ポンプの回転数や給水バルブを操作して給水流量を制御します(図5参照)。ドラム水位の外乱となるのはドラムにおける蒸発量、すなわち蒸気流量になりますが、ここで少しやっかいなのは、ドラム式ボイラの特性として蒸気流量が増えると過渡的にドラム水位が上昇するという現象(ドラム水位の逆応答現象)が起きることです。そのために、水位から給水流量へのフィードバック制御だけでは良い制御結果が得られません。
そこで、この逆応答現象を防ぐために蒸気流量から給水流量に対するフィードフォワード制御が適用されます。フィードフォワード制御の働きにより、蒸発量が変動してもその分だけ給水流量が変化するので、ドラム水位への影響を防ぐことができます。
この制御方式は、ドラム水位、蒸気流量、給水流量の3つの要素を扱うために「3要素制御」とよばれます。

図5 ボイラの給水制御(3要素制御)
〈参考文献〉
シンスキー(岩永正雄・小川 積幸・栗原 宏文・長山 千五郎 訳):プロセス制御システム(好学社)
千本 資・花淵 太 共編:計装システムの基礎と応用(オーム社)
川村貞夫・石川洋次郎 共著 :工業計測と制御の基礎(工業出版社)
| (*1) | 実際のプラントでは、ステップ応答法などを用いて測定することができます。ステップ応答法については2025年7月号「計装豆知識」をご参照ください。 |
| (*2) | 上部と下部のドラムを多数の水管でつないだ構造のボイラです。燃焼ガスで水管を温めることにより蒸気を発生させます。上部のドラムの水面から蒸気が発生します。 |
(株)エムジー 広報部