変換器

エムエスツデー 2005年10月号

計装豆知識

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今回は、電空変換器についてご説明します。

電空変換器

電空変換器は、その名のとおり電気信号を空気圧力信号に変換する信号変換器で、計装用信号変換器の中でもユニークな存在です注)。というのも、多くの信号変換器が電子回路だけで構成されているのに対し、電空変換器は、その兄弟ともいえる電空ポジショナと同様に、空気圧力を制御するために必要な機械的な駆動部が含まれているからです。かつて全盛を誇った空気式計装時代からの生き残りともいえます。しかし、生き残ったのは、ほかに置き換えることができない必要性があったからです。

電空変換器は、主としてコントロールバルブの操作信号発生源として利用されます。コントロールバルブの駆動装置(アクチュエータ)の多くには、現在も空気式が多用されていて、調節計からの電気信号を、電空ポジショナや電空変換器などを使って空気圧信号に変換しています。電空変換器の出力信号で直接アクチュエータを操作するのは、開度コントロールの精度をそれほど要求しない場合が多いですが、電空変換器の出力を空空ポジショナの入力信号用として用い、全体として電空ポジショナと同様の精度を得ている場合もあります。

空気式計装時代と現在のそれぞれの電空変換器を比較してみると、変化していない部分と変化した部分があります。

変化していない部分とは、ノズル・フラッパと呼ばれる圧力制御機構とそれを増幅するパイロットバルブの存在です。ところで、ノズル・フラッパを駆動するのにはトルクモータやフォースコイルなど電磁石を応用した機構が用いられています。エム・システム技研では、ノズル・フラッパ機構と駆動コイルとを一体化した、電磁フラッパと呼ぶ機構を採用しています。ノズル・フラッパ機構で得られた空気圧信号をパイロットバルブで増幅する仕組みは、現在も変化していません。

昔と比べて変化したのは、出力信号をフィードバックして、入力された電流とバランスさせて、ノズル・フラッパの 間隙 かんげき を調整する仕組みです。かつては、力平衡式と呼ばれる方法で、電空変換器自身の出力圧力をベローズなどに導き、その伸び縮みによってノズル・フラッパの 間隙 かんげき を調整するのが一般的でした。この方式は、取付姿勢や空気回路内部にカーボンなどが堆積することによって出力が変動する欠点がありました(図1)。

図1 力平衡方式電空変換器の動作原理

 

図3 電空変換器(形式:VP)

最近では、エレクトロニクス技術の発達に伴い、半導体圧力センサを用いた電子回路方式が普及してきました。圧力センサによって得られた出力空気圧に相当する電気信号と入力電気信号とを比較して、ノズル・フラッパを駆動するコイルの電流を調整する仕組みです。この方式では、圧力センサが取付姿勢や空気回路の内部状態の影響を受けないため、上記の力平衡式の欠点が解消されています。一方、圧力センサの精度が電空変換器全体の精度に影響を与えますが(図2)、エム・システム技研の電空変換器は(図3)、高精度で温度特性に優れた圧力センサを採用しているため、電空変換器としての性能も優れています。

図2 電子回路方式電空変換器の動作原理

注)電空変換器とよく似た製品に、電空レギュレータがあります。同じように電気信号を空気圧力に変換しますが、前者は出力した空気圧力を信号として扱い、その精度や安定性を重要視するのに対し、後者はそれを駆動用の動力源として扱い、出力流量が重要視されます。

 

【(株)エム・システム技研 開発部】

電空変換器の紹介動画はこちら

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