変換器
- アイソレータの必要性/2002.7
- 空電変換器/2005.11
- 警報接点のフェールセーフ(Fail-safe)/1994.8
- 高速応答形の変換器はハイグレードか/1995.1
- 超スロー接点パルス入力用変換器/1997.6
- 超高速アイソレータ/2005.9
- 電空変換器/2005.10
- 電空変換器には0.01ミクロンのフィルタを/1994.11
- 電源配線がいらないアイソレータ/1996.9
- 電源配線が要らない2線式伝送器/1996.10
- 2線式変換器について(その1)/2006.12
- 2線式変換器について(その2)/2007.1
- 熱電対で狭い温度レンジを測定/1996.7
- 熱電対用補償導線と現場設置形2線式変換器/2006.2
- パルス列信号の注意点/2006.8
- PID調節計と調節弁の正/逆の組合せ/1994.10
- 変換器の応答時間の表示方法/1997.1
- 変換器の基準精度と許容差/1994.2
- 変換器の小形化とタンタルコンデンサ/1998.8
- 変換器の仕様書の読み方について(1) 信号変換器の精度/2004.1
- 変換器の仕様書の読み方について(2) 信号変換器の精度(許容差)/2004.2
- 変換器の仕様書の読み方について(3) 信号変換器の温度係数/2004.3
- 変換器の仕様書の読み方について(4) 冷接点補償精度 /2004.4
- 変換器の仕様書の読み方について(5) 信号変換器のゼロ・スパン調整/2004.5
- 変換器の仕様書の読み方について(6) レンジ設定可能な信号変換器の精度/2004.6
- 変換器の仕様書の読み方について(7) ディストリビュータ(1)/2004.7
- 変換器の仕様書の読み方について(8) ディストリビュータ(2)/2004.8
- 変換器の仕様書の読み方について(9) 信号変換器の応答時間/2004.9
- 変換器の仕様書の読み方について(10) 供給電源(設置仕様)/2004.10
- 変換器の仕様書の読み方について(11) 絶縁抵抗および耐電圧/2004.11
- 変換器の仕様書の読み方について(12) ハウジング材質/2004.12
- ワイパーのないポテンショメータ、インダクポット/1999.3
エムエスツデー 2006年2月号
熱電対用補償導線と現場設置形2線式変換器
補償導線とは
熱電対と、その出力を信号変換するカップル変換器を接続する導線に銅線を使用した場合、熱電対と銅線の接続点(補償接点:図1のB点)と銅線とカップル変換器の接続点(基準接点:図1のC点)に温度差があると、測定温度に誤差が生じます。つまり、図1において、熱電対は、A点とB点の温度により熱起電力を発生します。そして、カップル変換器はC点の温度を測定して冷接点補償注1)をします。ここで、B点とC点の温度が異なり、その間の接続に銅線を使用した場合、B点とC点の温度差分が誤差になります。
この両接続点の温度差による測定誤差をなくすために、熱電対とカップル変換器を直接接続する方法が考えられますが、熱電対をカップル変換器まで延長して接続すると、次のような問題が発生します。
(1)熱電対の素線が細いため扱いにくく切れやすい
(2)単線で硬いため接続が難しい
(3)一般の銅線に比べて大幅なコスト高
この問題に対応するため、一般に「(熱電対用)補償導線」注2)と呼ばれている熱電対とほぼ同一の熱起電力特性をもつ導線を上記の延長接続線として使用します。
補償導線で配線すると、通常の導線のように手軽に接続できます。しかし、熱電対と同様にプラスとマイナスの極性がある点や補償接点温度には注意する必要があります。補償接点の温度が補償導線の仕様から外れたり、極性を間違えて接続すると正しい温度測定ができません(表1に種類と色別、表2に極性の色別を示します)。
表1 種類・記号および表面被覆の色別 JIS C 1995より
種 類 |
*1) 記号 |
旧記号 (参考) |
表面被覆の色別*2) |
旧規格 (参考) |
|||
組み合わせて
使用する
熱電対の種類 |
心線の構成材料 |
区分1 |
*3) 区分2 |
||||
+側心線 |
−側心線 |
||||||
B |
銅 | 銅 | BC |
BX |
灰 |
灰 |
灰 |
R |
銅 | 銅及びニッケルを主とした合金 | RCA |
RX |
黄赤 (だいだい) |
黒 |
黒 |
銅 | 銅及びニッケルを主とした合金 | RCB |
|||||
S |
銅 | 銅及びニッケルを主とした合金 | SCA |
SX |
黄赤 (だいだい) |
黒 |
黒 |
銅 | 銅及びニッケルを主とした合金 | SCB |
|||||
N |
ニッケル及びクロムを主とした合金 | ニッケル及びシリコンを主とした合金 | NX |
− |
うすい赤 (ピンク) |
− |
− |
銅及びニッケルを主とした合金 | 銅及びニッケルを主とした合金 | NC |
− |
||||
K |
ニッケル及びクロムを主とした合金 | ニッケルを主とした合金 | KX |
KX |
緑 |
青 |
青 |
ニッケル及びクロムを主とした合金 | ニッケルを主とした合金 | KCA |
− |
||||
鉄 | 銅及びニッケルを主とした合金 | KCB |
WX |
||||
銅 | 銅及びニッケルを主とした合金 | KCC |
VX |
||||
E |
ニッケル及びクロムを主とした合金 | 銅及びニッケルを主とした合金 | EX |
EX |
青紫 (すみれ色) |
紫 |
紫 |
J |
鉄 | 銅及びニッケルを主とした合金 | JX |
JX |
黒 |
黄 |
黄 |
T |
銅 | 銅及びニッケルを主とした合金 | TX |
TX |
暗い黄赤 (茶) |
暗い黄赤 (茶) |
茶 |
*1)補償導線の種類の記号は、組み合わせて使用する熱電対の種類と心線の構成材料によって表し、エクステンション形心線の記号はX、コンペンセーション形心線の記号はCとする。 *2)色名はJIS Z 8102に規定する基本色名及びその修飾語による。括弧は、その慣用名である。 *3)区分2は、将来廃止する。 |
極 性 |
表面被覆色別区分 |
旧規格 (参考) |
|
区分1 |
区分2 |
||
+側 |
表1 による種類ごとの表面被覆の色 |
赤 |
赤 |
−側 |
白 |
白 |
白 |
補償導線の欠点
熱電対とほぼ同一の熱起電力特性をもつことを最優先に材料が選定されているため、たとえばK熱電対用の公称断面積1.25mm2の補償導線の場合、1mの往復当たり約1Ωと電気抵抗は非常に高くなります。 したがって、温度測定点から計器室までの距離が長くなると配線抵抗が大きくなり、熱電対断線検出用のバーンアウト電流に起因する測定誤差が増えます。大規模プラントでは、公称断面積が大きい補償導線を使うことによって長距離伝送に対応しているのが現状です。
現場設置形2線式変換器の提案
エム・システム技研では保護管のヘッド(端子箱)内に取り付けられるヘッドマウント形2線式温度変換器(26・UNITシリーズ、27・UNITシリーズ(図2))注3)を提供しています。
2線式変換器の場合、電源と出力信号の配線が共通なので変換器・受信計器間の配線数は熱電対からの配線数と同じ2本です。また、変換器の設置場所で冷接点補償が行われているため、出力配線の導線素材には通常の銅線を使用できます。なお出力信号は、熱電対のような微弱なmVの信号ではなく、ノイズに強いDC4~20mA信号であるため、高い精度で非常に安定した長距離伝送が可能です。
注1)『エムエスツデー』誌2004年4月号の「計装豆知識」参照。
注2)熱電対用補償導線(JIS C 1610 参照)とは、「常温を含む相当
な温度範囲内で、組み合わせて使用する熱電対とほぼ同一の熱起電力特性をもち、熱電対と基準接点の間を接続し、熱電対との接続部分(補償接点)と基準接点との温度差を補償するために使用する一対の導体に絶縁を施したもの」です。
注3)各機器の詳細仕様については、エム・システム技研ホーム
ページ https://www.m-system.co.jp/の「データライブラリ」をご参照ください。