変換器

エムエスツデー 2006年12月号

計装豆知識

2線式変換器について(その1)印刷用PDFはこちら

2線式変換器とは

2線式変換器は、信号配線を通して変換器駆動用電力を受け取ることによって、専用の電源配線を省略することを可能にした変換器です注)

2線式変換器は、まず差圧伝送器に採用されました。差圧伝送器は、一般に広大なプラント内に点在しているため、電源配線を必要としない2線式変換器を使うことによって、計装工事費を大幅に下げることができるのです。

2線式変換器は、4線式変換器と違って変換器用電源配線が不要であるため、配線コストを大幅に低減できます。

たとえば、屋外に複数の貯蔵タンクがあるタンク・ヤードの場合、タンクはたいてい電源のとれない場所に散らばっていますが、このような場合、個別電源を必要としない2線式変換器を使用することによって容易に対応できます。

2線式変換器の原理

図1 2線式変換器の回路例

2線式変換器は、図1に示すように配線されます。

信号ループにはDC4~20mAの信号が流れます。この信号0%に対応する4mAの直流電流を利用して2線式変換器は動作できるようになっています。そして信号100%の場合は、2線式変換器は信号0%に対応する4mAに16mAを加算することによって信号ループに20mAを流すようにコントロールしています。

2線式変換器は変換器自体への入力信号とDC4~20mAの出力信号が正比例するように内部でコントロールしています。

2線式変換器には、それ自身の電圧降下V1が必要です。したがって、図1に示す信号ループ内の受信抵抗の最大値は(DC24V−V1)/20mAになります。

2線式変換器の信号は直流電流

2線式変換器の信号としては、おなじみの直流電流信号(DC4~20mA)が使われています。

このDC4~20mA信号は、電力設備がしばしば発生させる大きなノイズ電圧に対しても、非常に安定した伝送ができる点が見逃せません。

もし、電圧出力信号DC0~10Vの伝送ラインに10Vのノイズが乗ったとすれば、信号電圧と同じだけのノイズ電圧が現れることになります。しかし、図1で2線式変換器の出力端子から変換器内部を見たときの抵抗値は1MΩ以上です。したがって、ノイズ電圧10Vによって受信抵抗器に流れる電流I は、I (A)=10(V)/10 6 (Ω)=10−5 (A)=0.01mA となり、20mA に対しては1/2000の影響しか与えません。これが2線式変換器が優れている点です。

2線式変換器の用途

2線式変換器は、当初、差圧伝送器で採用され、現在では熱電対、測温抵抗体、電圧、パルス、ロードセル、CT、PTなど幅広い範囲の入力信号に対応した2線式変換器があります。

熱電対については、現場に2線式変換器を置くことにより、高価な熱電対用補償導線ではなく銅線を使って制御盤まで配線することができます。

また、現場の過酷な環境に耐えられるように、使用温度範囲が−40~85℃の2線式変換器が多く揃っています。

注)2線式伝送器について『エムエスツデー』誌1996年10月号 の「計装豆知識」でもご説明しています。

【(株)エム・システム技研 開発部】

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