センサ
- イオン電極のはなし/2001.3
- ORP(酸化還元電位)について/2001.4
- 温度センサ:サーミスタ/2006.11
- 温度センサの選択と設置(1)/1998.4
- 温度センサの選択と設置(2)/1998.5
- カルマン渦の話/1994.3
- コアレス電流センサ/2000.10
- CT(Current Transformer)について(1)/2008.07
- CT(Current Transformer)について(2)/2008.08
- ジルコニア式酸素濃度計の話/1994.7
- セルシン/2002.12
- 測温抵抗体の導線方式/2003.4
- 電気伝導率計のはなし/2000.12
- 電磁濃度計のはなし/2001.1
- 熱電対と熱電対信号変換器(1)/1998.6
- 熱電対と熱電対信号変換器(2)/1998.7
- 熱電対・変換器間の導線による温度測定誤差と対策/2012.10
- pH計(1)/2000.8
- pH計(2)/2000.9
- pH計(3)/2000.11
- ポーラログラフについて/2001.5
- 溶存酸素計のはなし/2001.2
- 流速計による流量測定方法/1996.3
- ロータリエンコーダ/2003.1
- ロードセルの仕組みと使い方/2018.1
エムエスツデー 2005年11月号
pH(ピーエッチ)計(3)
4.pH計の保守(前回9月号に続く)

(3)内部液の補充
pH電極の比較電極部には、内部液(KCl 溶液)が入っていて少量ずつ流出するため、定期的に内部液を補充する必要があります。電極部分の内部液収納容積は非常に小さいため、図1に示すように電極を保持するホルダーに内部液収納機能を兼ねさせ、液補充周期を長くした製品が主流になっています。
(4)電極ラインの絶縁抵抗の維持
本誌2000年9月号「計装豆知識 3.2 pH指示変換器」の項で説明したように、電極から変換器までのラインについては、高絶縁を維持しておくことが重要です。とくに湿度が高い所で使用するときは、コネクタボックスまたは変換器の密閉を確保し、端子台を清浄な状態に保つことが必要です。
5.pH計の自動制御
pHの自動制御で注意すべき点は、①反応が非線形特性であることと ②反応に遅れがあることです。代表的なpH自動制御の例は中和反応で、被制御液に調整のための試薬を一滴ずつで注入していった時、中和点付近で急激なpHの変化が起こります。すなわち、中和点の直前で最後の1滴を入れた時に目標pH値を大きく超えてしまうことがあります。これはpHの反応が非線形特性であるためで、うまく制御するためには、pH調整用の試薬濃度をある程度薄くする、あるいは目標値に近づいたら操作量(試薬添加量)を減少させる、いわゆる比例制御を導入するなどの対策が考えられます。近年比例制御技術は非常に進んでおり、解決は容易になっています。
化学的な反応時間で遅れを生じることは、ある程度やむを得ないことであり、待ち時間を設定するなど、制御設計上で考慮しておかなければなりません。しかし、実際の遅れは、電極汚れで検出器の応答が悪くなっている場合の方が多いという現実もあるようです。電極の汚れで応答が遅れる場合には、汚れが進むにつれ遅れ時間も長くなり、ますます制御しにくくなります。このような場合は、適切な自動洗浄装置を導入し、pH電極を常にきれいな状態に保っておくことが有効です。
おわりに
ガラス電極法によるpH測定は、非常に長い歴史を持った測定技術です。
電気回路的には、チョッパを用いた交流式真空管増幅器からトランジスタ増幅器へ、次いでオペアンプへ、さらにデジタル表示化からマイコン搭載へと変革が進みました。一方センサであるpH電極については、ガラス膜の組成、電極の形状などは進歩したものの、基本的には50年前と何ら変わるところはなく、十分使用経験を積んだ安定した技術といえます。近年、半導体センサなど新しい試みもみられますが、まだまだガラス電極法が使用され続ける状況であると考えられます。pH計は、プロセス制御用センサとしては他のものに比べやや使いにくい感じがありますが、ポイントを押さえておけば、様々なフィールドで便利に使用できる有効な測定器です。
<参考文献>
計量管理技術双書 「新版pH測定」 山下 熙(ひろむ)著 コロナ社
工業用水(昭和51年7月)「pHの測定とpH計の管理」伊東 哲 著
【筧 正志:東亜ディケーケー(株) 商品開発部】