センサ
- イオン電極のはなし/2001.3
- ORP(酸化還元電位)について/2001.4
- 温度センサ:サーミスタ/2006.11
- 温度センサの選択と設置(1)/1998.4
- 温度センサの選択と設置(2)/1998.5
- カルマン渦の話/1994.3
- コアレス電流センサ/2000.10
- CT(Current Transformer)について(1)/2008.07
- CT(Current Transformer)について(2)/2008.08
- ジルコニア式酸素濃度計の話/1994.7
- セルシン/2002.12
- 測温抵抗体の導線方式/2003.4
- 電気伝導率計のはなし/2000.12
- 電磁濃度計のはなし/2001.1
- 熱電対と熱電対信号変換器(1)/1998.6
- 熱電対と熱電対信号変換器(2)/1998.7
- 熱電対・変換器間の導線による温度測定誤差と対策/2012.10
- pH計(1)/2000.8
- pH計(2)/2000.9
- pH計(3)/2000.11
- ポーラログラフについて/2001.5
- 溶存酸素計のはなし/2001.2
- 流速計による流量測定方法/1996.3
- ロータリエンコーダ/2003.1
- ロードセルの仕組みと使い方/2018.1
エムエスツデー 2001年1月号
電磁濃度計のはなし
電磁誘導による電気伝導率測定
電極式の電気伝導率計の欠点である高電気伝導率液体の電極面での分極による誤差をなくすために、接液する電極を使用せず、電磁誘導を利用して測定する方法があります。とくに強電解質溶液、すなわち塩酸、硫酸、水酸化ナトリウムなどの高電気伝導率溶液の濃度を測定するのに用いられるため、電磁濃度計と呼ばれています。
また電極法では、金属電極を使用しているため、耐蝕性に問題がありますが、電磁誘導法では接液部をテフロンや塩化ビニルなど耐食性の高いプラスチックで被うことができるため、硫酸、フッ酸、塩酸など高電気伝導率、高腐食液の測定が可能です。
電磁濃度計の原理
図1に示すように、2個のトロイダルコイル(T1、T2 )を被測定液中に置くと、溶液は等価的に、T1、T2 の各々と鎖交する1ターンの回路L2 を形成します。T1 の一次コイルL1 に交流電圧V1 を印加すると、溶液により形成される回路L2 には、溶液の電気伝導率に比例した誘導電流 i が流れます。同時に、L2 を1次コイルとするトランスT2 の2次コイルL3 には、L2 に流れる電流i に比例した電圧V0 が発生します。したがって、この電圧V0 を測定することによって、溶液の電気伝導率を知ることができます。
電磁濃度計の検出部の構造を図2に、回路構成を図3に示します。
濃度計としての応用
東亜ディーケーケー(株)の電磁濃度計は、CPUを内蔵することによって高機能化を実現化するとともに、測定範囲も0~50μS/cm(最小レンジ)から0~2S/cm(最大レンジ)と広範囲にわたっているため、従来使用されてきた金属電極式に替わる製品になっています。
電解質が希薄なときは、電気伝導率と濃度は図4に挙げたように直線関係を示しますが、濃度が高くなると電解質が水中でイオン化しにくくなるため、図5に示すように、電気伝導率は逆に低下します。図4の場合、電気伝導率スケールを濃度スケールに置き換えて濃度計にすることは比較的簡単です。しかし図5の場合は、濃度−電気伝導率特性の極大値付近ではスケーリングができません(同じ電気伝導率に対して2つの濃度値が存在します)。
極大値付近以外の部分では濃度計として使用することができ、東亜ディーケーケー(株)では図中に挙げた電解質以外の溶液についても多くの実績をもっています。もちろん、事前に電気伝導率と濃度との関係を調査し、これに基づいて検量線を作成する必要があることは言うまでもありません。
【斉藤 誠:東亜ディーケーケー(株) 商品開発部】