センサ
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エムエスツデー 2001年5月号
ポーラログラフについて
ポーラログラフとは
溶液に浸漬した2つの電極の間に電圧をかけると、2電極間に電流が流れます。電圧をいろいろ変えて電流を測定する装置をポーラログラフといいます。このとき得られる電流と電圧の関係図をポーラログラム、または電流−電位曲線といい、ポーラログラフを用いた研究をポーラログラフィーと呼びます。
2つの極のうち、電圧をかけるときの基準になる極を対極、もう一方を作用極と呼びます。厳密には、作用極に滴下水銀電極を用いた測定装置をポーラログラフといい、その他の電極を用いたものをボルタンメトリーといいますが、実際にはあまり明確に区別して用いられてはいないようです。
ポーラログラフでは、直流やパルスなどいろいろな電圧を印加電圧として使います。対極には銀や鉛、また作用極には滴下水銀電極をはじめ、白金、金、ガラス化炭素などのほかに、最近では導電性ダイアモンドなども使用されています。
ポーラログラフで何が判るか
溶液中の物質は、作用極で酸化または還元されます。酸化とは分子や原子が電子を失う過程をいい、還元とは分子や原子が電子を得る過程をいいます。電子の授受が行われるので、作用極と対極の間に電流が流れます。この電流を拡散電流(Id )といい、作用極で酸化される物質(または還元される物質)の濃度(C )に比例しているので、拡散電流を測定すると物質濃度が分かります(定量分析)。
Id = KC
ただし、K は反応物質の原子価、拡散定数、作用極面積、ファラデー定数などによって決まる定数です。

一方、物質を酸化(または還元)するためにエネルギーを必要としますが、物質個々に必要とするエネルギーには差があります。ポーラログラフでは、このエネルギーを印加電圧という形で供給しています。そして、印加電圧を何ボルトにするのかで物質の種類を特定すること(定性分析)ができます。ポーラログラムのモデルを図1に示します。
ポーラログラフを使った計測器
ポーラログラフを使用した計測器のうち、最も一般的なものの一つに遊離残留塩素計があります(図2)。対極に銀、作用極に金を使って、水道水中の消毒薬剤である遊離残留塩素濃度を測定します。遊離残留塩素のポーラログラム(図3)を見ると、印加電圧−0.1V付近で拡散電流が平坦(プラトー領域)になるため、印加電圧が多少変動しても濃度に依存した拡散電流が得られることが分かります。実際、計測器では作用極に−0.1Vを印加しています。また、還元反応によって作用極が汚れるため、作用極にモータを取り付けて回転させ、溶液中に入れたセラミックビーズとこすりあわせることで電極面が汚れないように常に研磨して、連続測定できるよう工夫しています。
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【中野 泰介:東亜ディーケーケー(株) 商品開発部】