センサ
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エムエスツデー 2001年2月号
溶存酸素計のはなし
溶存酸素とは
私たちが呼吸をしているように、水中に住む生物は、水中に溶け込んでいる酸素を取り込んで生息しています。この溶け込んでいる酸素のことを溶存酸素といいます。この溶け込む量は水温が低いほど、また圧力が大きいほど多くなります。1気圧、25℃の条件下では、8.11mg/L(飽和溶存酸素量)の酸素が溶け込むと考えられています。水中の飽和溶存酸素量と水温の関係は図1のとおりです。水中の生物はこの酸素を取り込んで生息しますから、水中の生物が多ければ多いほど、溶存酸素量は少なくなってしまいます。環境測定では、この溶存酸素量を測定することによって、水の汚れ具合を示す指標の一つにしています。

溶存酸素の測定
溶存酸素の測定には、試薬を使い酸化還元反応を利用する分析法と、電極を使用する方法があります。ここでは電極法についてお話しします。

一般に、電解質溶液中に2種類の金属を浸せきし、両金属間に一定の電圧をかけると、溶存酸素量に応じた電流が流れることが知られています。これを利用したのが溶存酸素電極です。このとき、極で反応する酸素以外の物質が電解液中に含まれていると大きい誤差が生じるため、実際にはガス透過性膜を用いて試料中の妨害物質の影響を防いでいます。このようなタイプの電極を隔膜式電極と呼んでいます。ここで、両極間に一定電圧(0.5~0.8V)をかけて酸化還元反応を行わせ、このとき流れる酸素濃度に比例した電流を測定するタイプをポーラログラフ式と呼んでいます(図2)。また、2つの電極の材質の組合せ次第では、外から電圧を加えなくても溶存酸素量に対応する電流が流れるタイプがあります。具体的には銀(Ag)および鉛(Pb)を組み合わせ、電解液に水酸化カリウム(KOH)を用いると電池が構成され、酸素量に応じた電流が流れるものが使われ、このタイプをガルバニ電池式と呼んでいます(図3)。
溶存酸素電極は膜を通過する酸素を測定するわけですが、この透過量は水中の酸素の分圧に比例します。そこでこの分圧を測定し、濃度に換算するという操作が機器の中で行われます。実際には、飽和溶存酸素量を記憶させておき、この値を基に換算します。水中の飽和溶存酸素の分圧と大気中酸素の分圧はほぼ等しいために、簡易的に大気中の酸素分圧を利用して校正することもできます。
溶存酸素を測定していると、隔膜に接している部分では酸素が消費され、値が小さくなって行きます。このため、一定の流速を常に電極に与えておかなければなりません。また、電極内部の電解液も汚れますから、一定期間で電解液および隔膜を交換する必要があります。
以上簡単にご紹介しましたが、溶存酸素計の応用範囲は広く、環境測定からプロセス管理まで様々な分野で、また、用途に応じてポータブルからプロセス用まで様々な構造の製品が使われています。
【相澤 睦夫:東亜ディーケーケー(株) 商品開発部】