規格/標準

エムエスツデー 2000年4月号

計装豆知識

電気機械器具の防爆構造(2)印刷用PDFはこちら

防爆電気機器の種類

防爆電気機器の種類は、防爆構造と対象になる可燃物によって分類されます。

1. 防爆構造による分類

防爆構造としては、表1に示す種類があります。なお、IEC79およびわが国の技術的基準では、表に示した記号の前に防爆構造であることを示す記号「Ex」を付加して表記するよう定めています。また、欧州EN規格の場合は「EEx」を、米国NEC505の場合は「AEx」を付加します。

表1 防爆構造の分類

防爆構造の種類 構造規格による
分類記号
IEC79による
分類記号 注1)
米国(NEC 500)
耐圧防爆
(flameproof enclosure)
d d explosion proof
encrosure
内圧防爆
(pressurized apparatus)
f p pressurization
安全増防爆
(increased safety)
e e --
油入防爆(oil immersion) o o --
本質安全防爆
(intirinsic safety)
i ia またはib 注2) intrinsic safety
紛体充てん防爆構造
(power filling)
-- q 注3) --
樹脂充てん防爆構造
(encapsulation)
-- m 注3) --
タイプn 防爆構造
(type n protection)
-- n 注4) --
ノンインセンディヴ 注5) -- -- non-incendive

次に防爆構造の原理を大まかに分類すると、以下の4種類になります。

① 電気的な火花や高温が発生する箇所から爆発性雰囲気を隔離することにより、爆発を防ぐ構造。この原理に基づくものとしては、内圧防爆、油入(あぶらいり)防爆および樹脂充てん防爆があります。

② 内部で爆発が発生しても、容器がそのエネルギーに耐え、かつそのとき生じる火炎のエネルギーを失わせることによって、容器外部の爆発性雰囲気に引火させない構造。この原理に基づくものとしては、耐圧防爆および紛体充てん防爆があります。

③ 正常運転時に火花やアークあるいは高温部が発生せず、さらに承認された過負荷などの諸条件においても、火花やアークあるいは高温部が発生しにくいように安全性を高めた構造。この原理に基づくものとしては、安全増(あんぜんまし)防爆、タイプn 防爆およびノンインセンディヴがあります。

④ 本質的に安全な電気回路(本質安全回路)を使用することにより、爆発物に点火させない構造。この原理に基づくものとしては、本質安全防爆があります。本質安全回路とは、正常時および特定の故障時において、発生する電気的な火花やアークのエネルギーが対象となる爆発物の着火エネルギー以下であり、表面 温度も発火温度以下になるような回路です。なお、IEC79および準拠規格(技術的基準、EN規格および米国NEC505)では、故障箇所を2箇所想定するiaと、1箇所想定するibの2種類に分かれます。わが国の構造規格と米国NEC500では、すべて2箇所の故障を想定しています。また、本質安全防爆機器は、本安機器(IS)と本安関連機器(AA)とに分かれ、前者は危険場所において使用可能であり、後者は非危険場所に設置され本安機器に接続されます。

2. 対象爆発物による分類

対象となる爆発物(機器がどの爆発物に対して使用可能か)による分類は、各国(地域)または規格により異なっています。わが国の構造規格では、ガス(蒸気)および粉じんの両方を対象にしています。IEC79および準拠規格ではガスを対象にしています。また、米国NEC500では、ガス、粉じんおよび繊維を対象としています。なお、IEC79およびEN規格では、ガスに関して炭坑用とそれ以外に分類され、また粉じんに関する規格も準備中です。

いずれの規格も、耐圧防爆と本質安全防爆に関しては、対象爆発物に着火するのに要するエネルギーの大小により細分されています。構造規格では、爆発等級が1から3までの数字で表され、数字が小さいほど着火エネルギーを要します。つまり危険度が低くなります。その他の規格では、表2のように分類されています。

表2 着火エネルギーによる対象爆発物の分類

代表的な対象物 最小着火
エネルギー
IEC79による
分類 注1)
米国(NEC 500)に
よる分類
メタン(炭坑用) >260μJ Group I 注6、7) --
アセチレン >20μJ Group II C Class I Group A
水素 >20μJ Group II C Class I Group B
エチレン >60μJ Group II B Class I Group C
プロパン >180μJ Group II A Class I Group D
金属粉じん 準備中 注6) Class II Group E
石炭粉じん 準備中 注6) Class II Group F
穀物粉じん 準備中 注6) Class II Group G
繊維 -- -- Class III

着火エネルギーとは別に、発火温度(自然発火する機器の表面温度)によっても分類し、これを温度等級(または発火度)と呼んでいます(表3参照)。温度等級は、すべての防爆構造に適用されます。

表3 温度等級による分類

最高表面
温度[℃]
構造規格に
おける発火度
IEC79における
温度等級 注1)
米国(NEC 500)に
おける温度等級
450 G1 T1 T1
300 G2 T2 T2
280 T2A
260 T2B
230 T2C
215 T2D
200 G3 T3 T3
180 T3A
165 T3A
160 T3C
135 G4 T4 T4
120 T4A
100 G5 T5 T5
85 -- T6 T6

対象となる爆発物がいかなるグループ(爆発等級)、温度等級(発火度)に属するかは、規格に示されています。

以上をまとめると、先月号で例に挙げた「d2G4」(構造規格)は、耐圧防爆構造(記号:d)で、爆発等級2、発火度G4のガスまたは蒸気を対象としていることがわかります。また「Ex d IIB T5」(IEC79および準拠規格)は、耐圧防爆構造(記号:d)で、グループIIB、温度等級T5のガスまたは蒸気を対象としていることがわかります。

3. 危険場所の分類

一口に「爆発のおそれのあるガス等が雰囲気中に含まれるおそれがある場所」といっても、そのような状態が発生する度合は様々です。そこで、危険の発生度合によって危険場所を分類します。また、危険場所の種類によって、使用可能な防爆構造が異なります。

IEC79および準拠規格では、危険なガス等の存在する確率に応じて以下のように分類されています。

• ZONE 0(0種場所): 爆発性雰囲気が連続して又は長時間存在する区域
ZONE 1(1種場所): 爆発性雰囲気がプラント等の正常運転時に生成するおそれのある区域
ZONE 2(2種場所): 爆発性雰囲気がプラント等の正常運転時に生成するおそれがなく、また、仮に非正常時に生成するとしても、短時間しか存在しない区域

ZONE 0で使用可能な防爆構造は、本質安全防爆構造のうちの「ia」だけです。また、タイプ n防爆構造はZONE 2でしか使用できません

わが国の構造規格には、危険発生の確率による危険場所の分類という規定はありませんが、防爆指針(ガス蒸気防爆1979)によって、技術的基準と同様に、0種場所では本質安全防爆以外が使用できなくなりました。

米国NEC500では、上記のZone 0と1をあわせたものに相当する危険場所をDivision 1、Zone 2に相当する危険場所をDivision 2と呼んでいます。耐圧防爆、内圧防爆および本質安全防爆に限ってDivision 1で使用できます。

<参考文献>
防爆構造電気機械器具型式検定ガイド(産業安全技術協会刊)他

注1) 技術的基準、ENおよび米国NEC 505を含みます。
注2) 本安関連機器の場合、[Ex ia]や[Ex ib]のように、鍵かっこで囲って表示します。
注3) 技術的基準には規定がありません。
注4) IEC規格にだけ規定されていますが、現在のところ未発効です。
注5) 本誌1998年1月号の「計装豆知識」参照。
注6) IEC79およびENに適用します。
注7) 先月号にも記載したように、JIS規格には規定があります。

【(株)エム・システム技研 開発部】


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