規格/標準
- 技術輸出管理/2021.4
- IECExスキーム/2007.4
- ISO14000/2005.4
- IPコード/2003.7
- R&TTE指令について −CEマーキング−/2014.7
- RE指令について/2017.10
- 安全保障輸出管理における「該非判定」について/2008.6
- EMC規格について/2011.10
- EMC指令 −CEマーキング−/2010.4
- WEEE指令とRoHS指令/2005.1
- ATEX指令 −CEマーキング−/2010.7
- SI単位の話(1)/1995.3
- SI単位の話(2)/1995.4
- SI単位の話(3)/1995.5
- NEMA規格の電気機器用容器/2003.12
- エム・システム技研の環境保全への取組(1)/2008.4
- エム・システム技研の環境保全への取組(2)/2008.5
- 汚染度(Pollution Degree)/2009.10
- 改正RoHS(RoHS2)指令/2013.10
- 改正RoHS(RoHS2)指令[6物質から10物質へ]/2019.1
- 機能安全とIEC規格61508について(1)/2007.12
- 機能安全とIEC規格61508について(2)/2008.1
- 機能安全とIEC規格61508について(3)/2008.2
- 機能安全とIEC規格61508について(4)/2008.3
- 技術の輸出管理/2021.4
- グリーン調達の現状(1)− RoHS指令からREACH規則まで −/2009.7
- グリーン調達の現状(2)− RoHS指令からREACH規則まで −/2009.8
- CEマーキング/1995.2
- CEマーキング/2005.5
- CEマーキング(1)/2014.1
- CEマーキング(2)/2014.4
- CEマーキングに関するEU指令の改正について/2016.7
- 湿度の計量単位/1995.12
- CBスキーム/2006.3
- 設置カテゴリ(Installation Category)/2009.9
- タイプ“n”防爆構造について(1)/2009.5
- タイプ“n”防爆構造について(2)/2009.6
- 低圧避雷器(SPD)の性能試験規格JIS C5381-11について/2019.10
- 低電圧指令 −CEマーキング−/2010.1
- 電気機械器具の防爆構造(1)/2000.3
- 電気機械器具の防爆構造(2)/2000.4
- ノンインセンディブ規格(NON-INCENDIVE)/1998.1
- ノンインセンディブ防爆規格/2009.1
- 濃度の計量単位/1995.11
- パネル計器の裏側の感電保護/2007.10
- 舶用電気機器の船級協会型式承認/2013.4
- 白金測温抵抗体のJIS規格/2008.11
- 避雷関連のJIS規格について/2006.1
- 避雷器の分類/2011.1
- 紛争鉱物規制と米国再輸出規制/2017.7
- 米国の規制 FCCについて/2018.4
- UKCAマーキングの概要/2022.7
エムエスツデー 2019年10月号
低圧避雷器(SPD)の
性能試験規格JIS C5381-11について
2014年に大きく変わったJIS C5381-11についてご説明します。
低圧避雷器(SPD(*1))の性能試験規格である JIS C5381-1 (電源用SPD)、JIS C5381-21 (通信・信号回線用SPD) の中で、JIS C5381-1 は、新しい規格名を採用し、2014年に JIS C5381-11 として制定されました。
ここでは、2014年に大きく変わったJIS C5381-11についてご説明します。
改訂の経緯
IEC(国際電気標準会議)規格として、1998年にIEC 61643-1の第1版(Ed1.0) が制定され、この国際規格に基づき 2004年にJIS C5381-1(電源用SPDの要求性能と試験方法)が制定されました。
国際規格であるIEC 61643-1 は2002年と2005年に改定されましたが、数年内に何回ものJIS改正は不適切と判断され、また新規格IEC 61643-11の検討が行われていたこともあり、IEC 61643-11の制定を待って、JISの改定を行うことになっていました。2011年にIEC 61643-11 の第1版(Ed1.0) が制定されたのに伴って、国内規格JIS C5381-11が2014年に制定されました。
JIS C5381-11とJIS C5381-1の相違点
JIS C5381-11制定の趣旨は、規格の内容を充実させることにありましたが、審議の中で電源回路の電圧の定義がとくに問題になりました。国際規格では50/60Hzの交流1000V以下と定義していますが、国内の電気設備に関する技術基準を定める政令では、低圧は交流600V以下、直流750V以下となっているため、IEC規格にはない項目として日本での適応範囲が注記されています。
① 主な相違点
<適用範囲>
JIS C5381-1 では、交流 1000V以下および直流1500V以下の回路に適用するSPDでしたが、内容的には交流回路用のSPDだけに対して規定されていました。今回は、明確に50/60Hzの交流1000V以下という表現に変わり交流回路適用のSPDに限定されました。ただし、前述のとおり日本では電気設備技術基準を規定する政令があるため、交流600V以下であるという注記も記載されました。
<使用条件>
相対湿度の通常範囲が、30%~90% から 5%~95%に変更され、国際規格IEC 60364-5-51 の コードAB4との整合性が図られています。この変更は、温度および湿度制御をしていない屋内での使用を想定したものです。
<記号・略号>
SPDに関して、規格で使用する用語に対する記号と略号について、一覧表にまとめて記載しています。また、部品の図面も国際規格に応じて変更し、利用者の便宜を図っています。
<SPD分離器(*2)>
旧規格では、SPDは分離器を持ってもよいという規格でしたが、今回の改定により内部分離器、外部分離器、もしくはその両方を持っていなければならないと変更されました。また形式試験(*3)を実施する際は、外部分離器を組合せて試験することが明記されたため、メーカーが指定した外部分離器を使うことで、分離器の雷サージによる不要動作を抑えつつ、SPDが短絡故障した際には安全に電源からSPDを切り離せる性能をもつことが明確になりました。
一方でSPD分離器は、SPDだけを系統から切り離すため、分離器動作後は設備や機器がその後の過電圧から保護されなくなります。保護を優先させる場合は、SPD分離器ではなく電源側に遮断器などを設置する、またはSPDと分離器を2重化することで対応します。
図1に三相4線用回路の配線図とSPD分離器の設置例を示します。
<一時的過電圧 (TOV)(*4)>
システムの事故に起因する一時的過電圧(TOV)は、システムの違いによりその値が異なることがあります。我が国では一般的にTT系統(*5)の配電方式が使用されているため、国際規格で規定されているTOVのほかに、日本の実情に合った数値と考えられるTOVが追加されています。
② SPDに対する形式試験の要求事項
表1にSPDに対する形式試験の要求事項を一部抜粋して示します(詳細は、規格の原文をご覧ください)。
試験順序 | 試験項目 | 試験順序 | 試験項目 |
---|---|---|---|
1 | 識別及び表示(表示の不滅性試験) | 2 | 電圧防護レベル |
1 | 取付け | 2 | 残留電圧 |
1 | 端子及び接続 | 3 | 絶縁抵抗 |
1 | ボールプレッシャー試験 | 3 | 耐電圧 |
1 | 耐熱性及び耐炎性 | 4 | 耐熱性 |
1 | 耐トラッキング性 | 4 | TOV試験 |
エム・システム技研の対応製品
エム・システム技研では、JIS C5381-11に対応する製品として、電子機器専用避雷器M・RESTER®シリーズの三相一体形電源用避雷器(形式:MAT3)(図2)をご用意しています。
<参考文献>
JIS C5381-11:2014
低圧サージ防護デバイス-第11部:
低圧配電システムに接続する低圧サージ防護デバイスの要求性能及び試験方法
JIS C5381-12:2014
低圧サージ防護デバイス-第12部:
低圧配電システムに接続する低圧サージ防護デバイスの選定及び適用基準
JIS C60364-5-53:2006
建築電気設備-第5-53部:電気機器の選定及び施工-断路,開閉及び制御
(*1)SPD:surge protective device
(*2)SPD分離器:SPD または SPD の一部を、電源系統から切り離すためのデバイス
(*3)形式試験:本規格の一つ以上の試験項目に対して、SPDに実施する適合性試験
(*4)一時的過電圧(TOV):高圧系統および低圧系統での短絡・地絡事故や突然の負荷の遮断等により、
短時間継続する高電圧
(*5)TT系統:電力系統の1点を直接接地し、接地が必要な機器の接地(設備側接地(PE))を電力系統の接地
(電源側接地(N))とは電気的に独立した系統
【(株)エム・システム技研 設計部】