規格/標準

エムエスツデー 2018年4月号

計装豆知識

米国の規制 FCCについて印刷用PDFはこちら

米国での900MHz帯電波を使用する無線デバイスに対する規制と規則についてご説明します。

最近では「計装」の分野でも、計測値や現場情報などの伝送に900MHz帯の無線が利用されるようになり、無線機器は計装の重要な要素となってきました。
ところで無線機器には電波障害関係のEMC、EMI関係の規制や規約があり、その中でも米国のFCC関係の情報については、無線機器のメーカーだけではなく、ユーザーも知識を得ておくことが望ましいと考えられ、今回はこの問題を取り上げました。

FCC(連邦通信委員会)とは

米国内で無線デバイスを含む通信機器を販売するには、通信や電波の利用を管理するFCC(Federal Communication Commission: 連邦通信委員会)の認証を取得する必要があります。
FCCは、議会によって監督された独立した米国政府機関であり、米国の通信法と規制を実施する責任をもつ米国連邦政府機関です。
FCCは、50州、コロンビア特別区および米国領全域のラジオ、テレビ、電線、衛星、ケーブルによる州および国際通信を規制しています。

規制と規則

無線周波数はFCC によって管理されています。FCC の規制の対象には、無線デバイスのように意図的に電波を放射するものだけではなく、デジタル機器のように意図しない放射機器も含まれます。

(1)FCC が管轄する規制および規則概要(47 CFR)

FCC が管轄する規制および規則は、CFR(Code of Federal Regulations:連邦規則)のTitle 47 に記載されていて、GPO(Government Publishing Office:政府出版局)によって発行され、管理されています。
連邦官報に関する追加情報は、NARA(National Archives and Records Administration:国立公文書館事務局)のウェブサイトで入手できます。
また、規則の改訂はオンライン版のe-CFR(Electronic Code of Federal Regulations)で確認でき、GPO e-CFR ウェブサイトで入手できます。CFR ウェブサイトで実際に確認できるのは表1による内容です。

表1 FCC が管轄する規制および規則(47 CFRより一部抜粋)
Title Volume Chapter Parts 規制当局
Title 47 Telecommunication 1 I 0ー19 連邦通信委員会(FCC)
2 20ー39
3 40ー69
4 70ー79
5 80ー199

規制の構成は、CFR のタイトルにパートがあり、FCCが管轄する規制はパート0~199になります。パートの中はサブパートとセクションに分けられます。表現方法は、CFR Title 47 Part 15 Subpart C Section 247のようになります。または 47 CFR 15.247で表されます(本文中では 47 CFRは省略して、FCC Partの表現をとっています) 。

(2)無線デバイスに対する要求 FCC Part 2とFCC Part 15

900MHz帯の電波を使用する無線デバイスに対する要求であるFCC Part 2(一般規則)とFCC Part 15(無線周波デバイス)の概要については、表2にパートの中のサブパートとセクションの分類を一部抜粋して示します。

表2 FCC パート中のサブパート、セクション(47 CFRより一部抜粋)
パート サブパート セクション 内容
FCC Part 2
(一般規則)
(サブパート:AーN
セクション:1ー1400)
J 901ー1093 Equipment Authorization Procedures
(機器認証手続き)
FCC Part 15
(無線周波デバイス)
(サブパート:AーH
セクション:1ー717)
A 1ー38 General(一般)
B
(EMCに関する内容)
101ー123 Unintentional Radiators
(意図しない放射器)
C
(無線に関する内容)
201ー257 Intentional Radiators
(意図的放射器)

FCC Part15のサブパートBは EMC(Electromagnetic Compatibility)に関する内容で、FCC Part 15のサブパートCは無線に関する内容です。

(3)FCC認可方法

認可方法についてはFCC Part 2のサブパートJに記載があり、認証についてはFCC Part 2.901に次の記載があります。
「装置がサプライヤの適合宣言の下で認可されることを要求するか、または電気通信認証機関からの認可を受けることを要求することができる」

  • SDoC(*1)(適合宣言):責任当事者(*2)が、装置が該当する技術基準に適合しているか測定を実施し、適合宣言書を所有します。
  • 証明:申請者が、装置が該当する技術基準に適合しているか測定を実施し、FCCにより必要資料、試験データに基づき審査され、証明書が発行されます(一般的にはTCB(*3)経由で行います)。
(4)表記要求

注意事項として製品に表示する必要がある場合と、マニュアルに記載する必要がある場合とがあります。
製品表示は認証を受けた内容により、証明の場合とSDoC(適合宣言)の場合で表示が変わります。

  • 証明の場合:FCC ID表示
    FCC Part 2.925に記載があり、機器の識別として「FCC ID:xxxxx-zzzzzzzzzzzzzz」を表示します。
    モジュールを内蔵している場合の製品表示内容、およびマニュアル表示内容で「Contains Transmitter Module FCC ID: xxxxx-zzzzzzzzzzzz」または「Contains FCC ID: xxxx-zzzzzzzzzzzzzz」を表示します。
    FCC IDについてはFCC Part 2.926に記載があり、Grantee Code(3文字または5文字の申請者コード)の後に、認可の申請に際して申請者が決めたモデル毎のコード(最大14文字の、数字、英大文字、ダッシュまたはハイフン(-) を付けたものであり、無線デバイスの識別のために用いられます。
  • 図1 FCCロゴ SDoCを採用した場合:ロゴ表示
    FCC IDの代わりにロゴ(図1)と製品識別用に名前とモデル名を表示します(FCC Part 2.1074からFCC Part 2.1077に記載)。
  • FCC Part15の製品表示
    FCC Part 15の対象となる無線デバイスの多くについては、FCC Part 15.19 Labeling requirements(表示の要求)の(a)(3)に記載されている次の内容を機器上の見やすい場所に表示することも必要になります(図2)。
    図2 製品表示例 機器が小さく表示できない場合には、この内容はマニュアルへの記載に替えることが許されています。

エム・システム技研のFCC対応製品

エム・システム技研では、920MHz帯マルチホップ無線機器くにまる®シリーズの米国市場向け製品として、FCC対応 900MHz帯無線の製品を開発中です。

  • 図3 WL40EW2F Modbus/TCP(Ethernet)、
    Modbus-RTU透過型900MHz帯無線局(親機)
    ワイヤレスゲートウェイ
    (形式:WL40EW2F)(図3)
    (*4)
    900MHz帯の無線通信の Modbus-RTUと EthernetのModbus/TCP(Ethernet)のプロトコルを変換します。
  • 図4 WL40MW1F Modbus-RTU透過型900MHz帯無線局(子機)
    ワイヤレスゲートウェイ
    (形式:WL40MW1F)(図4)
    (*4)
    Modbus-RTUの通信プロトコルを使用し、900MHz帯の無線と有線(RS-485)の相互変換機能をもっています。

(*1)SDoC:Supplier’s Declaration of Conformity
(*2)主に、米国所在の製造業者または米国所在の輸入者
(*3)TCBとは、認証対象機器を認証するために、ISO/IECガイド 65および ISO/IEC規格17025への認定を
    認定機関から取得し、またFCCにより承認されている機関です(FCC Part 2.962電気通信認証機関の
    要件に記載)。
(*4)米国のみ使用できます。

<参考文献>
FCCホームページ

【(株)エム・システム技研 開発部】

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