規格/標準

エムエスツデー 2008年6月号

計装豆知識

安全保障輸出管理における「該非判定」について印刷用PDFはこちら

大量破壊兵器等の拡散防止や通常兵器の過剰な蓄積を防止するために、貨物(輸出品) 注1)やその仕向地 注2)によって、輸出に際して事前に経済産業大臣の許可を得ておくことが必要になる場合があります。

許可が必要になる貨物は、輸出貿易管理令(以下「輸出令」)の「別表第1」に列記されています。この「別表第1」は、16項目から構成されています。16項目のうち1の項から15の項までは品目別にそれぞれの仕様によって規定している、いわゆるリスト規制です。これに対し、16の項は品目ごとに仕様を定めるのではなく最終需要者や用途に関する知見によって規制する、いわゆるキャッチオール規制です。そして、輸出しようとする貨物が上記の法令で規定されているものに「該当する」か「非該当である」かを判定することを「該非判定」といいます。

図1 輸出に際して、許可が必要になる貨物の条件

リスト規制に対しては、輸出令別表第1の1の項から15の項に記載されている貨物名をチェックし、規制される貨物に該当するかどうかを判断します。関係する貨物名が全くなければ、「非該当」として規制の対象外になります。もしあった場合には、次にその貨物に対して定められた仕様に合致しているかどうかを判定します。この判定は、当該貨物の設計者、またはこれらと同等の専門分野の知識を有する者が行う必要があります。

次にリスト規制の対象外のものでも大量破壊兵器の開発等のために用いられるおそれを見定めるため、キャッチオール規制があります(輸出令別表第1の16の項)。キャッチオール規制では、食料品や木材など明らかに大量破壊兵器の開発等のために用いられないものを除き、すべての貨物が対象 注3)となり、輸出者自身で貨物が大量破壊兵器の開発等に用いられるおそれがないかどうかを判断し、必要に応じ手続きをとる必要があります。その場合の要件は次の2つで、いずれにも当てはまらない場合、手続きは不要です。

1.知っている場合(客観要件)

「輸出者が輸出しようとしている貨物が大量破壊兵器の開発等に使用されるおそれがあることを知っている場合」

なお、客観要件は次の2点に着目しています。

(1)「輸出する貨物の用途」
輸出者が入手した文書に、その貨物の用途が大量破壊兵器の開発等であることが記載されている場合等を指します。

(2)「輸出する貨物の最終需要者」
その貨物の最終需要者が、大量破壊兵器の開発等やそれに関連する行為を行なおうとしている場合や、過去に行なったと輸出者が知った場合を指します。経済産業省は、貨物が大量破壊兵器の開発等に用いられるおそれがある場合を示すため「外国ユーザーリスト」を公表しています。このリストは「安全保障貿易管理」のウェブサイトから入手できます 注4)

2.通知を受けた場合(インフォーム要件)

「輸出しようとしている貨物が大量破壊兵器の開発等に用いられるおそれがあるとして、経済産業省から通知を受けた場合」

インフォーム要件の通知は、輸出の時点の前に輸出者に対し、書面等によってなされることになります。

最後になりましたが、エム・システム技研の製品の該非判定結果を表示した該非判定書については、エム・システム技研のウェブサイトにある「サービス&サポート」の「輸出について」から、該非判定のための客観要件を入力することによってダウンロードいただけます(http://www6.m-system.co.jp/Parametersheet/)。

〈参考文献〉
安全保障貿易管理 ウェブサイト
  http://www.meti.go.jp/policy/anpo/
日本貿易振興機構(ジェトロ) ウェブサイト
  http://www.jetro.go.jp/indexj.html
「安全保障貿易管理ガイダンス」、(財)安全保障貿易情報センター

注1)貨物の輸出だけではなく、技術(プログラムを含む)の輸出、提供も規制の対象となり、これを役務取引といいます。
注2)輸出貨物の最終陸揚(空)港の属する国(又は領域)。
注3)食料品や木材などではないために16の項に当てはまる場合を「キャッチオール規制(16の項)に該当する」と表現する場合もありますが、手続きをとる必要があると誤解されることが多いため、エム・システム技研では、「キャッチオール規制(16の項)の対象になる」という表現をしています。
注4)ただし、輸出令別表第4の2に掲げられている米国など26か国(ホワイト国といいます)向け貨物については、原則として、キャッチオール規制の対象外と規定されています。

【(株)エム・システム技研 開発部】

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